『ばけばけ』で離婚するのは、トキとヘブンではなく、トキと最初の夫・山根銀二郎です。ふたりは互いを嫌いになったのではなく、松野家を背負うトキと、夫婦だけで生き直したい銀二郎の道が分かれたため、別れを選びました。
そして離婚後、トキはレフカダ・ヘブンと出会い、怪談を通じて心を通わせていきます。最終回まで描かれたのは「壊れた家族」ではなく、出会いによって人が何度も“ばけて”いく物語でした。
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、2025年9月29日から2026年3月27日まで全125回が放送された作品です。松野トキを髙石あかりさん、レフカダ・ヘブンをトミー・バストウさん、トキの最初の夫・山根銀二郎を寛一郎さんが演じました。
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ばけばけのあらすじで離婚するのは誰?トキと銀二郎の結末
『ばけばけ』で離婚するのは、松野トキと山根銀二郎です。トキとヘブンは離婚しません。
検索すると「ばけばけ あらすじ 離婚」という言葉が出てくるため、トキとヘブンが結婚後に別れる物語だと思った人もいるかもしれません。
しかし実際の物語では、トキはヘブンと出会う前に銀二郎と結婚し、第4週で別れています。ヘブンとの関係は、その離婚から数年後に始まります。
物語の順序を整理すると、次のようになります。
時期 トキをめぐる出来事 結末
第2週 山根銀二郎と見合いをして結婚 銀二郎が松野家へ婿入り
第3〜4週 借金や家風をめぐって銀二郎が疲弊 銀二郎が東京へ出奔
第4週 トキが東京で銀二郎と再会 松江と東京、別々の道を選ぶ
第5週以降 トキがヘブンと出会う 女中として暮らしを支える
第13週 銀二郎が復縁を申し込む トキへの思いを残し身を引く
第14週以降 トキとヘブンが夫婦として歩み始める 怪談を共に語り継ぐ
第23週 息子・勘太のため正式に婚姻 ヘブンが日本人になる決断
最終週 ヘブンとの別れと記憶 トキが夫との日々を語り残す
この流れを知っておけば、「離婚したのは誰なのか」「銀二郎とヘブンはどのような関係なのか」が混乱しにくくなります。
トキと銀二郎は第2週で結婚
トキと銀二郎は、お見合いをきっかけに出会いました。
銀二郎は旧鳥取藩の士族の家に生まれた青年です。決して裕福ではありませんが、トキと同じように怪談が好きで、初対面からふたりの会話は不思議なほど自然に弾みます。
怪談を好む娘は変わり者として見られがちな時代です。
そのため、自分の好きなものを笑わずに聞いてくれる銀二郎は、トキにとって初めて「そのままの自分」を受け止めてくれる存在でもありました。
第10回では縁談がまとまり、銀二郎は髷を落として松野家の婿になります。
ここだけを見れば、貧しくても心の通う夫婦が力を合わせて生きていく、穏やかな物語が始まったように見えました。
僕もこの時点では、別れが待っていると分かっていても、「何とかこのふたりのままで幸せになれないか」と願わずにはいられませんでした。
松野家の借金が銀二郎を追い詰める
ところが結婚後、銀二郎は松野家が抱える深刻な借金を知ります。
銀二郎は荷運びなどの仕事に加え、家でも内職をこなし、夫として松野家を支えようとしました。
それでも、稼いだ金は生活を豊かにする前に借金の返済へ消えていきます。
さらに、松野家には没落した後も士族としての誇りを手放せない勘右衛門がいました。
銀二郎は働き手として期待される一方、家の格式やしきたりにも従うことを求められます。
夫としてトキを守りたい。
けれども自分が働けば働くほど、松野家という大きな器の底へ力が吸い込まれていく。
銀二郎が苦しかったのは、貧乏そのものだけではありません。どれだけ努力しても、自分とトキの暮らしを作れないことだったのだと僕は感じます。
工場の倒産で生活がさらに悪化
トキが働いていた雨清水家の機織り工場は、傳の死を経て倒産します。
トキは職を失い、松野家の借金返済はますます難しくなりました。
以前にも持ち上がった、トキを遊女にして金を得る話まで再び現れます。
銀二郎はトキを守ろうとして仕事を増やしますが、その姿勢は勘右衛門と衝突しました。
家族のために働いているのに、その家族の価値観によって追い詰められる。
銀二郎にとって松野家は、愛する妻の家であると同時に、自分の人生を奪っていく場所にもなってしまったのです。第4週では、銀二郎が松野家を去り、東京へ向かう展開が描かれました。
離婚理由は「愛がなくなったから」ではない
トキは銀二郎の行方を知ると、家宝を売って工面された旅費を手に東京へ向かいます。
東京で銀二郎と再会したトキは、松江へ帰ってもう一度夫婦として暮らそうと伝えました。
しかし銀二郎が望んだのは、松野家へ戻ることではありません。
銀二郎は、トキとふたりで東京に残り、一から暮らし直したいと考えていました。
ここに、ふたりが離婚した最大の理由があります。
- トキは、両親や祖父を松江に置いていけない
- 銀二郎は、もう松野家の中では暮らせない
- トキは家族を背負うことを自分の責任だと考えている
- 銀二郎は夫婦ふたりの人生を優先したい
- 互いへの愛情は残っている
- それでも、暮らしたい場所と守りたいものが違う
つまり、離婚の原因は単純な性格の不一致でも、裏切りでもありません。
トキにとっての「家族」と、銀二郎にとっての「夫婦」が、同じ形ではなかったからです。
東京でなら夫婦を続けられる銀二郎と、松江の家族を捨てては生きられないトキ。
愛は残っていても、どちらかが自分の根を切らなければ一緒にはいられませんでした。
第20回では、東京の下宿で錦織友一たちと過ごした後、トキと銀二郎がそれぞれの道を選ぶことになります。第5週の冒頭では、銀二郎と別れてから4年が経過したことが示されました。
僕の胸に残ったのは、別れ際の激しさではなく、ふたりの間に流れる静けさでした。
本当に愛が消えていたなら、もっと簡単に憎めたはずです。
けれど、嫌いになれないまま手を離したからこそ、銀二郎との離婚は物語の終盤まで消えない余韻になりました。
離婚後のあらすじは?トキとヘブンが出会うまで
銀二郎と別れて4年後、トキは松江でしじみを売り、松野家の暮らしを支えていました。
別れによって借金が消えたわけではなく、突然人生が好転したわけでもありません。
トキは再び、朝から働き続ける毎日へ戻ります。
一方、世界を転々としてきた外国人英語教師レフカダ・ヘブンが松江へやって来ます。
船着き場でヘブンを迎える町の人々の中に、トキもいました。ここから、トキの人生はもう一度大きく姿を変えていきます。
トキはヘブンの女中になる
第6週では、錦織からの依頼を受け、トキがヘブンの女中として働く流れが描かれます。
当時、外国人男性の身の回りを世話する日本人女性には偏見が向けられることもありました。
それでもトキは、家族を養うために仕事を引き受けます。
ヘブンは日本の文化に強い関心を持つ一方、自分の理想とは違う日本の姿に苛立ち、周囲と衝突することもありました。
トキも英語を自由に話せるわけではなく、ふたりの会話は決して滑らかではありません。
しかし、言葉が不完全だからこそ、表情や間、身ぶり、日々の行動が大きな意味を持ちます。
元記事で語られていた「声にならない本音」という視点は、実際の『ばけばけ』にも通じます。
ただし、本作が見せたのは文字どおりの吹き出し演出ではなく、沈黙、視線、食卓、散歩といった小さな日常に感情を宿す演出でした。
怪談がふたりを結び付ける
トキとヘブンの関係を変えたのは怪談でした。
トキは幼い頃から、母フミたちが語る不思議な話を聞いて育っています。
銀二郎とも怪談をきっかけに心を通わせましたが、ヘブンにとって怪談はさらに特別なものでした。
トキが語る怪談を、ヘブンは異国の珍しい風習として消費するのではなく、その土地で生きた人々の心として受け止めます。
名も残らない人の悲しみ。
誰にも理解されなかった恨み。
死者と生者の間に残った約束。
トキの語りによって、ヘブンは日本という国を、建物や制度ではなく、人々の記憶から理解し始めました。
そしてトキもまた、自分が当たり前のように知っていた物語に価値があると教えられます。
銀二郎はトキの「好き」を肯定してくれた人でした。
ヘブンは、その「好き」が世界へ届く力を持つと気づかせてくれた人です。
この違いが、ふたりの男性を比べるうえで重要だと僕は考えます。
トキとヘブンはすぐに恋愛関係になったわけではない
トキとヘブンの距離は、突然縮まったわけではありません。
女中と雇い主。
日本人と外国人。
松江で家族を養う女性と、いずれ日本を離れるかもしれない旅人。
ふたりの間には、身分、言語、国籍、生活習慣といういくつもの壁がありました。
だからこそ『ばけばけ』は、派手な告白よりも、一緒に怪談を語る夜や、相手の帰りを待つ時間を積み重ねます。
誰かを好きになる瞬間は、鐘が鳴るようには訪れません。
何気ない時間が少しずつ積もり、振り返ったときには、その人がいない暮らしを想像できなくなっている。
トキとヘブンの関係は、そんな静かな変化として描かれました。
銀二郎は復縁する?第13週の再登場とトキの選択
銀二郎は第13週で松江へ戻り、トキに復縁を申し込みます。しかし最終的に再婚はせず、トキとヘブンの気持ちを察して身を引きました。
東京で別れてから4年。
トキのもとに、銀二郎が松江へ来ると記した手紙が届きます。
この頃、トキは夜ごとヘブンに怪談を語っていました。
一方で、ヘブンが日本滞在記を書き終えれば海外へ帰ってしまうのではないかという不安も抱えています。第61回では、元夫・銀二郎からの手紙が届いたことで、過去と現在が同時にトキの前へ現れました。
成功した銀二郎は松野家も養うと申し出る
再登場した銀二郎は、かつて松江を逃げるように去った青年とは違っていました。
東京で事業を成功させ、十分な収入を得られるようになった銀二郎は、今度こそトキだけでなく松野家も支えると申し出ます。
以前の銀二郎は、「トキか、松野家か」という二者択一を迫りました。
しかし再登場した銀二郎は、自分が松野家まで背負えば、トキは家族を捨てずに自分とやり直せると考えます。
これは、銀二郎なりに4年前の離婚理由と向き合った答えでした。
逃げたままでは終わらせない。
力をつけ、過去にできなかったことを実現し、今度こそトキを迎えに来る。
その誠実さがあるから、銀二郎の復縁話は単なる恋の邪魔役では終わりません。
ヘブンの前にはイライザが現れる
同じ頃、ヘブンのもとにはイライザが訪れます。
イライザはヘブンの過去や才能を理解し、日本の外に広がる世界を知っている人物です。
銀二郎がトキに「過去をやり直す道」を示したように、イライザはヘブンに「以前の自分へ戻る道」を示します。
第13週では、銀二郎がトキにやり直したいと告白する一方、トキ、銀二郎、ヘブン、イライザが偶然同じ場所に集まる展開となりました。
ここで描かれたのは、誰が優れているかを競う四角関係ではありません。
銀二郎もイライザも、トキとヘブンにとって大切な人物です。
しかし、人は過去を嫌いになったから前へ進むのではない。
過去を大切に抱えたまま、それでも現在の自分が求める場所を選ぶことがあります。
銀二郎はトキの視線で答えを知る
銀二郎は、トキがヘブンを見る表情から、トキの心が自分には戻らないことを悟ります。
トキは銀二郎を嫌っていません。
むしろ、別れた後も大切な人として心に残していました。
しかし、銀二郎と過ごした過去を大切に思う気持ちと、銀二郎と再婚したい気持ちは同じではありません。
銀二郎は復縁をあきらめ、いつか東京の怪談を聞きに来てほしいとトキへ伝えます。
しかも、その隣にいるのは自分でなくてもよいという思いまで残しました。トキとヘブンが互いに振り返って笑う姿を銀二郎が見つめ、身を引く流れは、第65回の大きな見どころとなりました。
僕はこの場面で、銀二郎がようやく「松野家から逃げた夫」ではなく、自分の足で立つひとりの人間になったと感じました。
愛する人を連れ戻すことだけが、愛の証明ではありません。
その人が自分ではない誰かと歩く未来を受け入れることもまた、苦しく、成熟した愛です。
「散歩しましょうか」がトキとヘブンを結ぶ
銀二郎とイライザを見送った後、トキとヘブンは互いの存在を強く意識します。
その感情を表す言葉が、「散歩しましょうか」でした。
華やかな愛の告白ではありません。
けれど、一緒に歩きたいという申し出は、その人と同じ時間を生きたいという意思でもあります。
第67回では、トキとヘブンが婚約したことが示されます。
僕は、この言葉こそ『ばけばけ』らしい愛の表現だったと思います。
人生は、劇的な瞬間だけで作られるものではありません。
同じ道を歩くこと。
帰りを待つこと。
今日あった出来事を話すこと。
怪談の続きを聞くこと。
そんな「たわいもない時間」を差し出すことが、ふたりにとっての告白だったのでしょう。
史実モデルも離婚していた?小泉セツとの違い
『ばけばけ』は、小泉八雲の妻・小泉セツをモデルにした物語です。
ヘブンのモデルはラフカディオ・ハーン、後の小泉八雲です。
元記事ではイザベラ・バードと通訳の伊藤鶴吉がモデルとされていましたが、これは『ばけばけ』の設定とは異なります。
NHK側は、小泉セツをモデルとしながら、人物名や団体名などを改め、大胆に再構成したフィクションであると説明しています。原作小説はありません。
銀二郎のモデルとされるのは前田為二
小泉セツにも、八雲と出会う前の結婚歴がありました。
最初の夫とされるのは、旧鳥取藩士の家に生まれた前田為二です。
セツは1886年、18歳の頃に前田為二と結婚したとされます。
ところが生活は長く続かず、翌1887年頃には実質的に別れ、法的な離婚が成立したのは1890年とされています。ドラマのトキと銀二郎の結婚・別離は、この史実を下敷きにしたものと考えられます。
ただし、銀二郎の性格や東京での再会、成功後の復縁話などは、ドラマとして構成された物語です。
史実とドラマを一対一で重ねるのではなく、モデルの人生にあった出来事をもとに、「家とは何か」「夫婦とは何か」を現代の視聴者へ問い直したと見るのが自然でしょう。
ドラマの離婚は「家制度」と「個人」の衝突
銀二郎はトキを愛していました。
トキも銀二郎を大切に思っています。
それでも結婚生活が続かなかったのは、ふたりだけの感情では解決できない問題があったからです。
松野家は借金を抱えています。
勘右衛門は士族としての誇りを守ろうとします。
司之介やフミも、トキも、家族という共同体の中で生きています。
そこへ婿として入った銀二郎は、トキの夫になるだけでなく、松野家を存続させる役割まで背負わされました。
現代の感覚なら、「家を出て夫婦だけで暮らせばよい」と考えやすいでしょう。
銀二郎も実際にそれを望みました。
しかし、トキにとって両親や祖父を置いていくことは、自分自身の一部を切り捨てることでした。
この離婚は、夫婦の愛情が弱かったから起きたのではありません。
個人として生きたい銀二郎と、家族の歴史ごと抱えて生きるトキの衝突だったのです。
離婚から正式な国際結婚までが一つの物語になっている
『ばけばけ』の結婚は、銀二郎との離婚だけで終わりません。
物語後半でトキとヘブンの間には息子・勘太が生まれます。
ふたりはすでに夫婦同然に暮らしていましたが、勘太と法的にも同じ家族になるため、正式に籍を入れることを決めました。
当時の制度では、日本人のトキと外国籍のヘブンが同じ戸籍に入るため、国籍をめぐる選択が必要になります。
第111回でその問題が示され、第112回では、ヘブンがトキと勘太の家族になるため日本人になることを決断しました。
ここに、このドラマ独自の鮮やかな構造があります。
銀二郎は松野家の婿になったことで、自分の人生を失いかけました。
一方のヘブンは、トキと勘太を守るため、自分の意思で日本人になる道を選びます。
同じ「家へ入る」という行為でも、強いられた銀二郎と、自ら選んだヘブンでは意味が違います。
僕は、この対比こそ「ばけばけ あらすじ 離婚」という検索だけでは見落とされやすい、物語の核心だと考えます。
『ばけばけ』が描いた家族は、血や戸籍だけで決まるものではありません。
誰のために、何を手放し、どこで生きると決めるのか。
その選択の積み重ねによって、人は家族になっていくのです。
最終回までのあらすじは?トキとヘブンが残したもの
最終回でトキとヘブンが離婚することはありません。ふたりは夫婦として暮らし、怪談を生み出し、やがてヘブンの死によって別れを迎えます。
2026年3月27日に放送された第125回では、ヘブン亡き後のトキが、家族に見守られながら夫との思い出を語りました。
トキが向き合うのは、離婚の後悔ではありません。
ヘブンの人生を、自分が台無しにしてしまったのではないかという苦しい思いです。
ヘブンの死と「思ひ出の記」
最終週では、ヘブンの胸の痛みや死が描かれます。
ヘブンが亡くなった後、イライザはトキに、ヘブンについて書き残すことを求めました。
しかしトキは、自分が語った怪談によって、ヘブンに評価されない作品を書かせてしまったのではないかと悩みます。
怪談がふたりを結び付けたはずなのに、その怪談がヘブンの名声を傷つけたのではないか。
人生の最後に、夫を誤った方向へ進ませたのではないか。
トキは、大切だった日々を簡単には美しい思い出として語れなくなっていました。
最終回では、司之介やフミに見守られながら、トキが丈にヘブンとの記憶を語っていきます。物語の中心となったのは、ヘブンの死後にトキがふたりの日々を書き残す「思ひ出の記」でした。
家族が思い出させた「たわいもない日々」
トキはヘブンの人生を悪くしてしまったと自分を責めます。
すると家族は、ふたりが一緒に過ごした日々を一つずつ思い出させました。
最初からすべてが幸福だったわけではありません。
言葉が伝わらないこともありました。
文化の違いから腹を立てることもありました。
家族がヘブンへ頼りすぎたと感じる出来事もありました。
それでも、後から振り返れば、うらめしかった出来事さえ笑って語れる思い出に変わっていました。
フミの言葉によって、トキはようやく気づきます。
ヘブンと過ごしたのは、歴史に残る偉大な日々だけではない。
たわいもない、けれど、すばらしい日々だった。
この気づきによって、トキはヘブンとの暮らしを語り始めます。
制作統括の橋爪國臣さんは、最終回で、当時はうらめしかったことが後から素敵な記憶へ反転するようなエピソードを描きたかったと説明しています。
ラストシーンは初回へとつながる
最終回のラストは、時間や現実を一つに決めない余白を残しました。
トキとヘブンが再び向き合い、「散歩しましょうか」と歩き始める姿は、過去の回想とも、死後の再会とも、物語がもう一度始まる循環とも受け取れます。
制作側も、ラストがどの世界なのかについて、視聴者の想像に委ねる意図を示しています。
さらに、八雲が蚊に生まれ変わりたいと語った逸話を踏まえ、並んだ本の前を蚊が通り過ぎる描写も盛り込まれました。
一つだけ確かなのは、トキとヘブンの物語が、死によって完全には終わらなかったことです。
ヘブンは書物の中に残ります。
トキの声は、その書物の土台として残ります。
そして、ふたりを見届けた家族の記憶にも残ります。
銀二郎との離婚によって一度は未来を失ったように見えたトキが、最後には、自分の語った物語によって夫を未来へ送り出す。
その長い変化を思うと、タイトルの「ばけばけ」は、妖怪だけを指す言葉ではなかったのだと感じます。
考察|離婚から最終回までに描かれた家族の変化
『ばけばけ』の離婚を、「銀二郎よりヘブンのほうが運命の相手だったから」とだけ説明するのは簡単です。
しかし、それでは銀二郎との結婚に込められた意味が薄くなってしまいます。
銀二郎は失敗した夫ではありません。
トキに怪談を好きなままでよいと伝え、トキが自分の心を守るきっかけを与えた人です。
銀二郎との時間があったから、トキはヘブンと出会った後も、自分の好きなものを完全には手放さずにいられました。
銀二郎との離婚はトキの自立ではなかった
朝ドラの離婚では、古い結婚から解放されたヒロインが、自分の力で新しい人生へ進む形が描かれることがあります。
しかしトキの場合、銀二郎と別れた直後に自由になったわけではありません。
トキは松野家へ戻り、借金を背負い、しじみを売り続けます。
つまり、離婚した時点のトキは「家から解放された女性」ではなく、むしろ家に残ることを選んだ女性です。
ここが『ばけばけ』の切ないところです。
銀二郎の提案を受けて東京へ残れば、トキは貧しい松野家から離れられたかもしれません。
それでも帰った。
それは正しい、間違っていると簡単に裁ける選択ではありません。
トキは家族を背負わされた被害者であると同時に、その家族と生きることを選んだ当事者でもあります。
人の人生は、いつも分かりやすい解放へ向かうわけではない。
愛着と責任が絡み合い、遠回りに見える道を自分で選ぶこともあります。
銀二郎とヘブンは「家族」の反対側を見ていた
銀二郎は、夫婦ふたりで暮らすことを望みました。
それは決して身勝手な願いではありません。
夫婦とは、家のために存在するのではなく、ふたりの人生を作るものだという考え方です。
対するヘブンは、トキだけでなく、トキが背負っている家族や土地の記憶まで受け入れていきました。
ただし、ヘブンが最初から理想的な夫だったわけではありません。
言葉も文化も違い、自分の理想を相手へ押しつける危うさもありました。
ヘブン自身も、トキや松野家と暮らす中で変わっていきます。
人は、ぴったり合う相手を見つけて幸せになるのではない。
違う人間と暮らし、傷つき、学び、少しずつ「一緒に生きられる人」へばけていく。
僕には、この物語がそう語っているように見えました。
離婚・復縁・国籍の選択は一本につながっている
トキの人生には、家族の形が変わる三つの大きな場面があります。
一つ目は、銀二郎との離婚です。
ここでは、家に縛られることによって夫婦が別れました。
二つ目は、銀二郎の復縁申し込みです。
ここでは、過去をやり直す可能性より、現在育っている感情を選びました。
三つ目は、ヘブンが日本人になる決断です。
ここでは、誰かに強制されたのではなく、自分の妻子と同じ家族になるため、ヘブン自身が所属を選びました。
この三つを並べると、『ばけばけ』が描いた家族観が見えてきます。
家族は、生まれた場所や古い制度だけで決まるのではなく、誰と歩くかを選び続けることで作られる。
銀二郎との離婚は、その答えにたどり着くための失敗ではありません。
トキ、銀二郎、ヘブンがそれぞれ自分の人生を選び直すために必要だった分岐点です。
まとめ|ばけばけの離婚は誰かを悪者にしない
『ばけばけ』で離婚するのは、トキと最初の夫・山根銀二郎です。
ふたりの別れは、愛情がなくなったからではありません。
トキは松野家を離れられず、銀二郎は松野家へ戻れなかった。
その埋められない違いによって、ふたりは別々の道を歩きます。
離婚から4年後、銀二郎は成長した姿で戻り、トキに復縁を申し込みました。
それでもトキの心がヘブンへ向かっていると知り、銀二郎は自ら身を引きます。
トキとヘブンは怪談を通じて結ばれ、息子・勘太を授かり、正式な家族になるため国籍の問題にも向き合いました。
最終回で描かれたのは離婚ではなく、ヘブンの死後も消えない夫婦の記憶です。
別れた人も、亡くなった人も、その人と生きた時間まで消えるわけではありません。
銀二郎はトキの過去を作り、ヘブンはトキと未来へ残る物語を作りました。
人生の道は、一度別れたら二度と交わらないように見えます。
けれど、その人にもらった言葉や優しさは、自分の中に残り、次の誰かと歩くときの一部になる。
『ばけばけ』の離婚が悲しいのに温かく感じられるのは、別れを失敗として片づけず、人が変わるために必要だった時間として描いたからではないでしょうか。
画面が暗くなった後も、僕の胸には、トキと銀二郎が食べた朝食と、トキとヘブンが歩き始めた道が残っています。
別れも出会いも、後悔も笑い話も抱えながら、人は何度でも姿を変える。
それでも心の奥には、かつて誰かと歩いた足音が、静かに残り続けるのです。
よくある質問
ばけばけでトキとヘブンは離婚しますか?
離婚しません。
離婚するのは、トキと最初の夫・山根銀二郎です。トキとヘブンは夫婦として暮らし、息子・勘太が生まれた後、正式に籍を入れるため国籍の問題にも向き合います。
トキと銀二郎の離婚理由は何ですか?
最大の理由は、暮らす場所と家族に対する考え方の違いです。
銀二郎は松野家を離れ、東京でトキとふたりだけの暮らしを望みました。一方のトキは、借金を抱える両親や祖父を松江に残すことができず、別れを選びます。
銀二郎はトキに復縁を申し込みますか?
第13週で復縁を申し込みます。
東京で成功した銀二郎は、今度は松野家も含めて養うと伝えます。しかし、トキとヘブンが思い合っていることに気づき、最終的には復縁をあきらめて身を引きました。
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