深夜残業の割増率は何%?普通残業との違いと計算方法をわかりやすく解説

夜22時を指す壁掛け時計と、オフィスの机に置かれた給与明細と電卓 労務・給与

深夜残業の割増率は、時間外25%と深夜25%を合わせた「50%以上」です。 法定労働時間を超えた残業が22時〜翌5時にかかると、時給の1.5倍以上を支払う必要があります。

普通残業との違いは、割増を決める基準にあります。普通残業は「何時間働いたか(量)」、深夜手当は「何時に働いたか(時刻)」、休日割増は「どの日に働いたか(日付)」で決まります。この三つの物差しを軸に、早見表と計算例で整理していきます。

  1. 深夜残業の割増率は何%?結論は「50%以上」
    1. 時間外割増と深夜手当は「足し算」になる
    2. 深夜残業・深夜手当の割増率早見表
    3. 深夜の時間帯は「22時〜5時」で固定?
  2. 普通残業と深夜残業の違いとは?基準は「量・時刻・日付」の三つ
    1. 「量」の物差し:法定内残業には割増が付かない
    2. 「時刻」の物差し:深夜労働は所定時間内でも割増が付く
    3. 「日付」の物差し:法定休日と所定休日の違い
  3. 深夜残業はそもそも何時間まで?前提となる36協定と上限規制
    1. 36協定の上限は原則「月45時間・年360時間」
    2. 36協定がなくても割増賃金の支払い義務は消えない
  4. 深夜手当の計算方法|時給制・月給制の具体例
    1. 時給1,200円で24時まで残業したケース
    2. 月給制は1時間あたりの賃金に換算する
    3. 月給から除外できる手当は7つだけ
    4. 端数処理のルール
  5. 夜勤・変形労働時間制・フレックスの深夜残業はどう計算する?
    1. 夜勤など所定労働時間が深夜帯の場合
    2. 変形労働時間制では「量」の判定だけが変わる
    3. フレックスタイム制は清算期間の総枠で時間外を判定
    4. 法定休日の深夜と、日付をまたぐ勤務
    5. 月60時間を超えた深夜残業は75%以上
  6. 管理職・固定残業代・アルバイトでも深夜手当は必要?
    1. 管理職(管理監督者)でも深夜手当は必要
    2. 固定残業代・裁量労働制でも深夜分は別
    3. アルバイト・パート・派遣も同じ割増率
  7. 深夜に働く人を守るルール|健康診断・妊産婦・育児介護
    1. 深夜業従事者は6か月以内ごとに健康診断
    2. 妊産婦・育児介護中の人は深夜業を断れる
  8. 深夜手当が未払いのときは?請求期限と相談先
  9. 深夜残業の割増率をどう読むか|僕の考察と今後の見通し
    1. 未払いの原因は「計算」より「区分」にあると考える
    2. 判例の流れは「名目より実態」
    3. 法改正の動向について
  10. 深夜残業の割増率と深夜手当の計算方法まとめ
  11. よくある質問
    1. 36協定がない会社で深夜残業させられた場合、割増賃金はもらえますか?
    2. フレックスタイム制で22時以降に働いたら深夜手当は付きますか?
    3. 妊娠中や子育て中に深夜勤務を断ることはできますか?
  12. 執筆・確認について
  13. 参考

深夜残業の割増率は何%?結論は「50%以上」

結論から言うと、深夜残業(法定時間外労働のうち22時〜5時の部分)の割増率は50%以上です。

根拠は労働基準法第37条です。会社が就業規則や個別の合意で、この率を下げることはできません。

時間外割増と深夜手当は「足し算」になる

労働基準法は、1日8時間・週40時間を「法定労働時間」と定めています。これを超えた労働には、通常の賃金の25%以上の割増が必要です。

一方、22時〜翌5時の労働には、深夜割増(深夜手当)として25%以上が必要です(第37条第4項)。

二つは別々の理由で発生するため、重なれば足し算になります。

  • 時間外割増:25%以上
  • 深夜割増:25%以上
  • 深夜残業の合計:50%以上

厚生労働省の解説冊子「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」でも、法定時間外労働が深夜に及んだ場合は2割5分以上と2割5分以上を合わせて5割以上で支払う、と説明されています。

僕が強調したいのは、深夜割増は残業かどうかと無関係に、時刻だけで発生するという点です。ここを押さえるだけで、後の計算が一気に整理されます。

深夜残業・深夜手当の割増率早見表

時給1,000円を例に、ケースごとの割増率を一覧にしました。

区分割増率1時間あたり
法定内残業 ※1割増なし1,000円
普通残業25%以上1,250円
深夜労働(所定内)25%以上1,250円
深夜残業50%以上1,500円
所定休日労働 ※2割増なし/25%以上1,000円/1,250円
法定休日労働35%以上1,350円
法定休日+深夜60%以上1,600円
月60時間超の残業50%以上1,500円
月60時間超+深夜75%以上1,750円

※1 会社の所定労働時間は超えているが、1日8時間・週40時間の範囲に収まっている残業。

※2 所定休日(法定外休日)の労働は、1日8時間・週40時間のいずれも超えない場合は割増なし。どちらかを超えた部分には時間外の25%以上が付く。

「休日に働いた=35%」とは限らない点が、この表でいちばん見落とされやすい部分です。

深夜の時間帯は「22時〜5時」で固定?

原則として、深夜は午後10時から午前5時までです。

条文上は、厚生労働大臣が認めた地域・期間に限り「午後11時〜午前6時」とする例外があります。ただし厚生労働省の解説によれば、この規定で地域や期間が指定されたことはありません。実務では「22時〜5時」と覚えておけば十分です。

普通残業と深夜残業の違いとは?基準は「量・時刻・日付」の三つ

普通残業は「1日8時間・週40時間を超えた労働時間(量)」に25%以上、深夜手当は「22時〜5時という時刻」に25%以上が付きます。 休日割増は「法定休日という日付」に35%以上です。

この三つの物差しは互いに独立しています。そのうえで重なれば加算される、というのが割増賃金の全体像です。

※画像はAIによるイメージ

「量」の物差し:法定内残業には割増が付かない

所定労働時間が10時〜18時(休憩1時間)なら、所定は7時間です。18時〜19時の1時間は会社の定めを超えていますが、法定の8時間以内に収まっています。

この1時間は法定内残業で、法律上の割増は発生しません(通常の賃金は支払われます)。割増が付くのは、8時間を超えた19時以降です。

ただし、就業規則で「所定を超えたら割増を払う」と定めている会社では、その定めが優先されます。

「時刻」の物差し:深夜労働は所定時間内でも割増が付く

厚生労働省の労働条件ポータルサイト「確かめよう 労働条件」のQ&Aには、18時〜24時に時給1,200円で働くアルバイトの例があります。労働は6時間で、法定労働時間は超えていません。

それでも22時以降は深夜にあたるため、1時間あたり1,500円(1,200円+300円)以上の支払いが必要とされています。

量では残業にならなくても、時刻では深夜になる。二つの物差しが独立しているからこその結論です。

「日付」の物差し:法定休日と所定休日の違い

法定休日は、労働基準法で義務づけられた週1日(または4週4日)の休日です。この日に働くと35%以上の休日割増が必要です。

所定休日(法定外休日)は、週休2日制の「もう1日」のように会社が独自に定めた休日です。休日割増の対象ではなく、1日8時間・週40時間を超えた部分に時間外の25%以上が付きます。

土日休みで日曜が法定休日の会社なら、土曜出勤は所定休日労働、日曜出勤は法定休日労働です。どちらが法定休日かは、就業規則で確認するのが確実です。

法定休日労働には時間外の割増が重なりません。8時間を超えても35%のままで、重なるのは深夜だけです。そのため法定休日の深夜は35%+25%=60%以上になります。

三つの物差しのうち、どれとも重なり得るのは「時刻」の深夜割増だけ。僕はここが、深夜手当を理解するいちばんの鍵だと考えています。

深夜残業はそもそも何時間まで?前提となる36協定と上限規制

深夜残業の計算に入る前に、押さえておきたい前提があります。会社が法定時間外や法定休日に働かせるには、36協定(サブロク協定)の締結と労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法第36条)。

36協定の上限は原則「月45時間・年360時間」

働き方改革関連法により、時間外労働の上限は法律で定められました。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用されています。

  • 原則:月45時間・年360時間
  • 特別条項付きでも:年720時間以内
  • 時間外と休日労働の合計:単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6か月まで

建設業、自動車運転の業務、医師などは猶予されていましたが、2024年4月から業種ごとの上限が適用されています。

36協定がなくても割増賃金の支払い義務は消えない

36協定を結ばずに残業させることは、第32条違反です。ただし、違法な残業であっても、実際に働いた時間の割増賃金は支払う必要があります。

なお、深夜労働そのものは36協定の対象ではありません。所定労働時間が夜にある働き方なら、協定がなくても深夜に働くこと自体は可能です。そのうえで、深夜割増は必ず付きます。

「36協定」は量の上限を決めるルールで、「深夜手当」は時刻への補償。役割が違うと理解しておくと、混乱しません。

深夜手当の計算方法|時給制・月給制の具体例

月給制でも、月給を1時間あたりの賃金に換算すれば、深夜残業は時給制と同じく1.5倍以上で計算します。

計算式の基本は次の一行です。

割増賃金=1時間あたりの賃金×割増率×該当する労働時間

時給1,200円で24時まで残業したケース

時給1,200円、所定10時〜18時(休憩1時間、所定7時間)で、24時まで残業した場合です。

時間帯区分計算金額
10〜18時所定労働1,200円×7h8,400円
18〜19時法定内残業1,200円×1.00×1h1,200円
19〜22時普通残業1,200円×1.25×3h4,500円
22〜24時深夜残業1,200円×1.50×2h3,600円
合計17,700円

22時を境に、1時間あたりの単価が1,500円から1,800円に上がります。給与明細の残業代を見るときは、この「切り替わり」が反映されているかを確認してください。

月給制は1時間あたりの賃金に換算する

1時間あたりの賃金=月給÷1か月平均所定労働時間

1か月平均所定労働時間=(365日−年間所定休日)×1日の所定労働時間÷12か月

基本給275,000円、精皆勤手当8,500円、1日8時間、年間所定休日122日の場合です。

  • 平均所定労働時間:(365−122)×8÷12=162時間
  • 計算の基礎となる月給:275,000円+8,500円=283,500円
  • 1時間あたりの賃金:283,500円÷162時間=1,750円

この人が深夜残業を1時間すれば、1,750円×1.5=2,625円以上です。

月給から除外できる手当は7つだけ

時給換算のときに計算から外せる手当は、労働基準法第37条第5項と施行規則第21条で決まっています。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

厚生労働省の「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」は、これらを例示ではなく限定列挙と説明しています。この7つ以外の手当(役職手当、精皆勤手当など)は、原則として計算に含めます。

さらに、判断は名称ではなく実態で行われます。「住宅手当」という名前でも、全員に一律額で支払われていれば、計算に含める対象です。

※画像はAIによるイメージ

端数処理のルール

厚生労働省の解説では、事務簡便のため次の処理が認められています。

  • 1時間あたりの賃金・割増賃金額の1円未満:50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ
  • 1か月の割増賃金総額の1円未満:同じく50銭基準
  • 1か月の時間外・休日・深夜の時間合計:30分未満切り捨て、30分以上は1時間に切り上げ

一方、1日ごとの労働時間は1分単位で把握するのが原則です。毎日の残業を15分単位で切り捨てる処理は認められません。

夜勤・変形労働時間制・フレックスの深夜残業はどう計算する?

ここからは、夜に働く職種の人がつまずきやすいケースです。どれも「量・時刻・日付」を当てはめれば解けます。

夜勤など所定労働時間が深夜帯の場合

時給1,400円、所定22時〜翌7時(深夜帯に休憩1時間)の夜勤です。

  • 22時〜5時(休憩を除く6時間):深夜割増のみ 1,400円×1.25×6h=10,500円
  • 5時〜7時(2時間):割増なし 1,400円×2h=2,800円
  • 合計:13,300円

深夜帯の休憩時間は労働時間ではないため、深夜割増の対象外です。ただし、休憩中も電話番や見守りで実際に業務をしていれば、労働時間として扱われ得ます。

会社が任意で払う「夜勤手当」と、法律上の「深夜手当」は別物です。夜勤手当が深夜割増分として明確に区分されていない限り、夜勤手当を払っているから深夜割増は不要、とはなりません。

変形労働時間制では「量」の判定だけが変わる

1か月単位などの変形労働時間制では、あらかじめ定めた日に1日8時間を超える所定労働時間を組めます。

たとえば所定が14時〜翌1時(休憩1時間、10時間)の日なら、10時間までは時間外になりません。時間外になるのは、その日の所定(8時間を超える日は所定)を超えた時間、週・変形期間の法定枠を超えた時間です。

しかし深夜割増は時刻で決まるため、変形制でもそのまま発生します。この例なら、22時〜翌1時の3時間に25%以上が付きます。変わるのは「量」の物差しだけ、と覚えてください。

フレックスタイム制は清算期間の総枠で時間外を判定

フレックスタイム制では、1日8時間を超えても、すぐには時間外になりません。清算期間(最長3か月)の法定労働時間の総枠を超えた時間が時間外労働です。清算期間が1か月を超える場合は、月ごとに週平均50時間を超えた部分も時間外になります。

それでも、22時以降に働いた時間には深夜割増が付きます。始業・終業を自分で決められる働き方でも、「時刻」の物差しは動きません。

法定休日の深夜と、日付をまたぐ勤務

時給1,200円で、法定休日に9時〜23時(休憩1時間)働いた場合です。

時間帯区分計算金額
9〜22時(休憩除く12h)休日労働1,200円×1.35×12h19,440円
22〜23時休日+深夜1,200円×1.60×1h1,920円
合計21,360円

残業が24時を越え、翌日が法定休日なら、0時で扱いが切り替わります。休日は暦日(0時〜24時)で判断されるからです。

  • 24時まで:前日の時間外(22時以降は50%以上)
  • 0時〜5時:休日+深夜(60%以上)
  • 5時以降:休日労働(35%以上)
※画像はAIによるイメージ

月60時間を超えた深夜残業は75%以上

1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は、時間外の割増率が50%以上になります。2023年4月1日からは中小企業にも適用されています。

この部分が深夜に及べば、50%+25%=75%以上です。

  • 法定休日労働の時間は60時間に含めない
  • 所定休日労働のうち時間外にあたる時間は60時間に含める

労使協定により、引き上げ分(25%→50%の差額)に代えて有給の「代替休暇」を与える制度もあります。ただし代替休暇を取っても、深夜割増の25%は別途支払う必要があります。

管理職・固定残業代・アルバイトでも深夜手当は必要?

先に結論を言えば、深夜割増はほとんどの働き方で消えません。 詳細な論点は多いため、ここでは要点に絞ります。

管理職(管理監督者)でも深夜手当は必要

労働基準法第41条の管理監督者は、時間外手当・休日手当の対象外です。しかし除外されるのは「労働時間、休憩及び休日」に関する規定で、深夜割増は除外されません。

最高裁は2009年12月18日の判決(ことぶき事件)で、管理監督者も深夜割増賃金を請求できると判断しました。同判決は、所定賃金に深夜割増分が含まれていることが明らかなら、その範囲で別払いは不要とも示しています。

管理監督者かどうかは肩書きでは決まりません。2008年1月28日の東京地裁判決(日本マクドナルド事件)では、店長が管理監督者にあたらないとされました。いわゆる「名ばかり管理職」なら、時間外・休日手当も必要です。

固定残業代・裁量労働制でも深夜分は別

固定残業代は、通常の賃金と割増賃金部分を判別できることが有効性の前提です。最高裁も、2018年7月19日の日本ケミカル事件、2020年3月30日の国際自動車事件などで、この考え方を示してきました。

実際の割増賃金が固定額を上回れば、不足分の支払いが必要です。裁量労働制でも、深夜の労働には深夜割増が付きます。

アルバイト・パート・派遣も同じ割増率

割増賃金は雇用形態を問いません。派遣社員の深夜・時間外の割増賃金は、派遣元が支払います。

労使で「深夜割増は払わない」と合意しても無効です。労働基準法第13条により、法律の基準に達しない労働条件はその部分が無効となり、法律の基準が適用されるからです。

一方、業務委託(フリーランス)で労働基準法上の「労働者」にあたらない人には、割増賃金の規定は適用されません。ただし契約の名前ではなく、指揮命令の有無などの実態で労働者かどうかが判断されます。

僕自身、ドラマの制作現場に関わってきて、同じ深夜の撮影現場でも、雇用されたスタッフと業務委託のスタッフで深夜の扱いが違う場面を見てきました。深夜手当の話を「自分は対象か」から確かめる人が多いのは、こうした働き方の混在があるからだと感じています。

深夜に働く人を守るルール|健康診断・妊産婦・育児介護

深夜手当は「お金」の保護ですが、深夜労働には「体」を守るルールもあります。

深夜業従事者は6か月以内ごとに健康診断

深夜業を含む業務に常時従事する人は、労働安全衛生規則第45条の「特定業務従事者」にあたります。会社は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回、健康診断を行う必要があります。

さらに、労働安全衛生法第66条の2では、一定の深夜業に従事する人が自ら受けた健康診断の結果を会社に提出できる「自発的健康診断」の制度も設けられています。

妊産婦・育児介護中の人は深夜業を断れる

  • 妊産婦(妊娠中・産後1年以内)が請求した場合、会社は深夜業をさせてはなりません(労働基準法第66条第3項)
  • 小学校就学前の子を養育する人や家族を介護する人は、一定の要件のもと深夜業の制限を請求できます(育児・介護休業法第19条・第20条)

また、満18歳未満の人を22時〜5時に働かせることは原則禁止です(労働基準法第61条)。違法に働かせた場合でも、深夜割増の支払い義務は残ります。

25%の深夜割増は、こうした保護の延長線上にある。そう捉えると、単なる計算ルール以上の意味が見えてきます。

深夜手当が未払いのときは?請求期限と相談先

賃金請求権の消滅時効は、2020年4月1日以降に支払日が来る賃金について、当面の間3年です(労働基準法第115条・附則第143条)。3年を過ぎた分は、原則として請求できなくなります。

相談先は次のとおりです。

  • 労働基準監督署への申告・相談
  • 都道府県労働局の総合労働相談コーナー、紛争解決の「あっせん」

雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカードや勤怠記録、業務メールの送信時刻などを手元にそろえておくと、事実確認が進みやすくなります。

深夜残業の割増率をどう読むか|僕の考察と今後の見通し

ここからは僕の私見です。

※画像はAIによるイメージ

未払いの原因は「計算」より「区分」にあると考える

厚生労働省は毎年、労働基準監督署の監督指導で是正させた賃金不払残業の結果を公表しています。近年も、是正額は年度によって数十億円から100億円を超える規模にのぼっています。定期監督で指摘される主な違反項目にも、割増賃金(第37条)が挙げられています。

一次資料と判例を整理して僕が感じたのは、誤りが起きやすいのは計算式より時間の切り分けだということです。

  • 法定内残業と法定時間外の境目の取り違え
  • 所定休日を法定休日と同じ35%で処理する(またはその逆)
  • 変形労働時間制・フレックスで、深夜割増まで付け忘れる
  • 日付をまたぐ勤務で、0時以降の区分を誤る
  • 管理職だからと、深夜割増まで外してしまう
  • 月給の計算基礎に入れるべき手当を外してしまう

給与明細を見るときは、金額より先に「何時から何時が、どの区分か」を確認する。これが一番の近道だと僕は考えています。

判例の流れは「名目より実態」

裁判所は、管理監督者の範囲、固定残業代の有効性のいずれでも、肩書きや手当の名前ではなく実態を見てきました。深夜分の内訳を示していない固定残業代は、会社側にとって大きなリスクになると考えられます。

時効が2年から3年に延びたことで、未払いが発覚したときの請求額も以前より膨らみやすくなっています。

法改正の動向について

執筆時点(2026年10月)で、深夜割増の25%という率そのものを変える改正は、僕が確認した範囲では見当たりません。 一方、厚生労働省の研究会では、副業・兼業時の労働時間の通算と割増賃金の扱いなど、労働時間制度の見直しが議論されてきました。

制度は動く可能性があるため、最新の内容は厚生労働省の発表で確認してください。

シフト制や在宅勤務で昼と夜の境目が曖昧になるほど、「22時」という明確な線の意味は重くなっていく。僕はそう見ています。

深夜残業の割増率と深夜手当の計算方法まとめ

  • 深夜残業の割増率は50%以上(時間外25%+深夜25%)
  • 割増は「量(時間外)」「時刻(深夜)」「日付(休日)」の三つで決まり、深夜だけはどれとも重なる
  • 法定休日の深夜は60%以上、月60時間超の深夜残業は75%以上
  • 所定休日は1日8時間・週40時間を超えた部分に25%以上
  • 残業の前提は36協定で、上限は原則月45時間・年360時間
  • 変形労働時間制・フレックスでも、22時〜5時の深夜割増はそのまま発生
  • 管理職・固定残業代・アルバイトでも深夜手当は必要
  • 未払い賃金の請求期限は当面3年

よくある質問

36協定がない会社で深夜残業させられた場合、割増賃金はもらえますか?

もらえます。36協定なしの時間外労働は労働基準法違反ですが、実際に働いた時間の割増賃金の支払い義務は消えません。深夜にかかれば50%以上です。

フレックスタイム制で22時以降に働いたら深夜手当は付きますか?

付きます。フレックスで変わるのは時間外の判定方法(清算期間の総枠で判断)だけで、22時〜5時に働いた時間には25%以上の深夜割増が必要です。

妊娠中や子育て中に深夜勤務を断ることはできますか?

できます。妊産婦が請求すれば会社は深夜業をさせられません(労働基準法第66条)。小学校就学前の子を養育する人などは、育児・介護休業法に基づいて深夜業の制限を請求できます(要件あり)。

執筆・確認について

本記事は、ドラマ評論家・ブログ運営者の僕(岸本湊人)が、労働基準法・労働安全衛生法・育児介護休業法の条文、厚生労働省の公開資料、公表された判例をもとに整理したものです。僕は社会保険労務士などの専門資格者ではなく、本記事は専門家の監修を受けていません。そのため、すべての記述を一次資料に照らして確認し、計算例は検算しています。

参照した主な資料は、労働基準法(第13条・第32条・第36条・第37条・第41条・第61条・第66条・第115条)、労働基準法施行規則第21条、労働安全衛生規則第45条、育児・介護休業法第19条・第20条、厚生労働省「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」、厚生労働省「確かめよう 労働条件」のQ&A、厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」リーフレット、最高裁2009年12月18日判決(ことぶき事件)、東京地裁2008年1月28日判決(日本マクドナルド事件)、最高裁2018年7月19日判決(日本ケミカル事件)、最高裁2020年3月30日判決(国際自動車事件)です。

内容は執筆時点(2026年10月)の法令に基づいています。個別のケースは、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。

夜に働く人の1時間には、昼とは違う重みがある。その重みを正しく数字にすることが、深夜手当の役割なのだと思います。

(文・岸本 湊人)

参考

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