原作小説『一次元の挿し木』の作者・松下龍之介とは?宝島社からの出版情報やwiki的解説

紫陽花と古人骨、DNAの二重らせん、高圧ポンプの設計図と原稿用紙が重なる知的ミステリーの情景 小説解説
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『一次元の挿し木』の作者・松下龍之介さんは、1991年4月生まれの技術者兼作家で、2026年7月現在35歳です。

千葉工業大学大学院を修了後、高圧ポンプの設計や技術提案に携わりながら創作を続け、第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作でデビューしました。『一次元の挿し木』は宝島社による2026年6月25日の発表で、累計65万部突破が明らかにされています。

「松下龍之介とはどんな人物なのか?」

「年齢や出身地、学歴、本業を知りたい」

「なぜ技術者として働きながら『一次元の挿し木』を書けたのか?」

ドラマ化をきっかけに、原作だけでなく作者自身へ興味を持った人も多いのではないでしょうか。

僕が松下龍之介さんの経歴を追って強く感じたのは、華々しいデビューの裏側に、意外なほど地道な時間が流れていることです。

海外MBAを目指していた時期があり、コロナ禍を一つの契機として創作へ向かい、SF、海外サスペンスと試行錯誤を重ねる。

さらに、専門外だった遺伝子学を基礎から学び、約3年にわたるリサーチを経て完成させた3作目が、『一次元の挿し木』でした。

偶然、一本の道を当てたわけではありません。

何本もの道を歩き、迷い、調べ、書き直した末に、ようやく大きな道路へ出た。

この記事では、『一次元の挿し木』の作者・松下龍之介さんについて、年齢、出身地、学歴、技術者としての仕事、小説を書き始めた経緯、デビューまでの歩み、受賞と累計65万部までの推移、現在の活動を時系列で分かりやすく紹介します。

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『一次元の挿し木』作者・松下龍之介とは?年齢とプロフィール

松下龍之介さんは、1991年4月生まれ、東京都江戸川区出身の作家・技術者です。

宝島社の公式プロフィールによると茨城県牛久市在住で、千葉工業大学大学院工学研究科修士課程を修了しています。2026年7月現在の年齢は35歳です。

プロフィールを整理すると、次のようになります。

項目 内容
名前 松下龍之介
読み方 まつした りゅうのすけ
生年月 1991年4月
年齢 35歳(2026年7月現在)
出身地 東京都江戸川区
居住地 茨城県牛久市
学歴 千葉工業大学大学院工学研究科修士課程修了
職業 作家・技術者
本業として公表されている仕事 高圧ポンプの設計・技術提案
小説デビュー作 『一次元の挿し木』
主な受賞歴 第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ
現在確認できる創作活動 小説執筆、漫画原作

宝島社の商品ページでは、松下さんは機械システム事業を扱う会社に勤務し、火力発電所や製鉄所向けの高圧ポンプの設計や技術提案に携わっていると紹介されています。

※画像はAIによるイメージ

このプロフィールで、僕が最初に注目したのは「技術者から作家へ完全に転身した人物」ではないことです。

少なくとも宝島社が公開しているプロフィールでは、技術者として働く一方で創作活動を続けている人物として紹介されています。

昼と夜で、まったく違う種類の設計図を描いている。

そんな姿を想像すると、『一次元の挿し木』の緻密な構造にも興味が湧いてきます。

ただし、ここで「技術者だから優れたミステリーが書けた」と単純に結論づけるのは早いでしょう。

重要なのは職業名ではなく、松下さんが知らないことを調べ、条件を整理し、物語として成立するまで検討を重ねた制作過程にあると僕は考えています。

松下龍之介の学歴と経歴は?技術者から作家になるまで

松下龍之介さんは、千葉工業大学大学院工学研究科の修士課程を修了しています。

WEB別冊文藝春秋のインタビューでは、自身が大学時代に流体力学の研究をしていたことを明かしています。現在公表されている仕事は、火力発電所や製鉄所向けの高圧ポンプの設計と技術提案です。

一方、小説家としての道は、幼少期から一直線に目指してきたものではありませんでした。

2025年4月3日に公開されたWEB別冊文藝春秋のインタビューで、松下さんは会社員として働きながら将来のキャリアを考え、別の選択肢を持ちたいと考えていたことを明かしています。

当時は海外MBAへの進学を目指して勉強していましたが、新型コロナウイルスの流行によって海外留学が難しくなったことも、創作へ向かう一つの契機になったと説明しています。

人生には、ときどき予定していた出口が閉じる瞬間があります。

けれど、閉じた扉の前で立ち尽くしていると、それまで見えていなかった別の入口に気づくことがある。

僕は松下さんの経歴を知り、人生の方向転換とは、すべてを捨てて急カーブを切ることだけではないのだと感じました。

仕事を続けながら、別の可能性を育てる。

その小さな枝が、やがて一本の作品として根を張ったのです。

松下龍之介の経歴を時系列で整理

松下龍之介さんの創作開始から2026年までの流れを整理すると、次のようになります。

時期 主な出来事
2020年前後 会社員として働きながら小説執筆を開始
執筆初期 1作目にSF、2作目に海外を舞台としたサスペンスを執筆
その後 3作目として『一次元の挿し木』を執筆
2025年 第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作としてデビュー
2025年2月5日 宝島社文庫から『一次元の挿し木』発売
2025年5月 発売約3カ月で累計30万部突破と宝島社が発表
2025年秋 BUN-1グランプリ2025でグランプリ獲得
2026年6月25日 宝島社が累計65万部突破を発表
2026年7月5日 山田涼介さん主演の連続ドラマが放送開始予定

創作開始時期については、2025年4月のインタビューで「5年ほど前」「コロナ少し前くらい」と説明されているため、ここでは2020年前後と整理しています。

また、1作目がSF、2作目が海外を舞台にしたサスペンス、3作目が『一次元の挿し木』だったことも本人が明かしています。

つまり、読者の前に現れたデビュー作は一冊でも、その手前には少なくとも二つの長編執筆経験があったことになります。

これは、松下龍之介さんを知るうえで重要なポイントでしょう。

完成した橋だけを見れば、突然そこに現れたように感じます。

しかし水面の下には、何度も引き直された線と、渡れなかった橋の記憶が沈んでいる。

僕は、デビュー作の華やかな数字以上に、この「表に出るまでの試行錯誤」に作家としての粘り強さを感じます。

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松下龍之介はなぜ小説を書いた?『一次元の挿し木』誕生の背景

『一次元の挿し木』は、非常に強い謎から始まります。

ヒマラヤ山中で発掘された200年前の人骨をDNA鑑定すると、4年前に失踪した妹のDNAと一致する。

宝島社の商品紹介では、大学院で遺伝人類学を学ぶ悠が不可解なDNA鑑定結果に直面し、担当教授の死や古人骨の盗難を経て、大きな企みに巻き込まれていく物語として紹介されています。

この物語の着想源について、松下さんはWEB別冊文藝春秋のインタビューで説明しています。

きっかけとなったのは、新聞に掲載されていたナショナルジオグラフィック関連の記事で知った、ヒマラヤ山中のループクンド湖に関する話でした。

湖周辺では多数の人骨が見つかり、亡くなった時期も一様ではない。その情報から、松下さんは「DNA鑑定をすると自分の妹だったら」という方向へ発想を広げていきました。

※画像はAIによるイメージ

僕がこの創作過程で興味深いと感じるのは、専門知識から物語を始めていない点です。

松下さんは遺伝子学の専門家ではありません。

最初にあったのは知識ではなく、「そんな矛盾が起きたら、どうなるのだろう」という疑問でした。

そこから必要な知識を調べ、謎が成立するように物語を組み上げていく。

これは、『一次元の挿し木』の読みやすさを考えるうえでも重要なポイントだと僕は考えています。

読者はDNAの専門家でなくても、「200年前の人骨と4年前に失踪した妹が同じDNA」という異常事態をすぐに理解できます。

入口の疑問は、誰にでも分かる。

しかし扉を開けた先には、科学、歴史、家族、人間の信念が絡み合う複数の通路が延びています。

難しい題材を扱いながら入口を狭くしなかったことが、本作の大きな強みではないでしょうか。

約3年間のリサーチ、最初の約半年は基礎から学習

松下龍之介さんは、『一次元の挿し木』の制作にあたり、約3年をかけてリサーチを行ったと明かしています。

そのうち約半年は本を読み、遺伝子とは何か、DNA鑑定では何をするのかという基礎的な部分から学んだと語っています。

ここは誤解しやすい部分です。

「半年間だけ調べて小説を書いた」のではありません。

本人の説明では、作品全体のリサーチに約3年をかけ、その過程の最初の約半年を基礎学習に充てたという整理になります。

一方で、大学の研究室や実験室の描写には、自身が流体力学の研究をしていたころの経験が反映されています。

インタビューでは、先生のスペースを区切るホワイトボードや大きな実験室など、実際に研究を行った場所をイメージしたことも明かしています。

この「調べた知識」と「自分が知っている感覚」の組み合わせは、とても興味深いものです。

DNAの専門知識は一から調べる。

一方で、研究者が過ごす空間の空気は、自分の記憶を使う。

僕は、ここに松下さんの創作姿勢がよく表れていると思います。

知らない部分を想像だけで埋めず、調べる。

知っている部分は、自分の経験から手触りを加える。

派手な裏技ではありません。

しかし小説の信頼感とは、案外こうした地味な継ぎ目の処理から生まれるのかもしれません。

最初のプロットはA4用紙約2枚だった

『一次元の挿し木』ほど多層的な作品であれば、最初から分厚い設定資料が存在したのではないかと想像したくなります。

しかし、本人によると当初のプロットはA4用紙で約2枚でした。

執筆を進めるうちに人物の輪郭がはっきりし、登場人物同士の影響関係も膨らんでいったため、『このミステリーがすごい!』大賞の応募要項に収めるために、人物や展開を削る作業も行ったと説明しています。

このエピソードから見えるのは、松下さんが「最初から完成された巨大設計図を持つ作家」というより、書きながら人物と物語を成長させ、最後に全体を整える作家だということです。

増やすだけでは、物語は重くなる。

削るだけでは、人物の体温が消える。

どこまで枝を伸ばし、どこを剪定するか。

『一次元の挿し木』というタイトルを眺めていると、その創作過程そのものにも、どこか植物を育てるような感覚が重なって見えてきます。

『一次元の挿し木』の受賞歴と累計65万部までの歩み

『一次元の挿し木』は、2025年2月5日に宝島社文庫から発売されました。

宝島社の商品ページによると、384ページ、価格900円(税込)、ISBNは978-4-299-06404-2です。価格や販売状況は変わる可能性があるため、購入時には販売先の最新情報を確認してください。

書誌情報を整理すると、次の通りです。

  • 書名:『一次元の挿し木』
  • 著者:松下龍之介
  • 出版社:宝島社
  • レーベル:宝島社文庫
  • 発売日:2025年2月5日
  • ページ数:384ページ
  • 公式掲載価格:900円(税込)
  • ISBN:978-4-299-06404-2
  • 受賞:第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ

同作は第23回『このミステリーがすごい!』大賞の文庫グランプリを受賞し、松下龍之介さんの小説デビュー作となりました。

そして発売後、数字を大きく伸ばしていきます。

宝島社は2025年4月28日に発売約2カ月で20万部突破、同年5月21日には発売約3カ月で30万部突破を発表しました。さらに出版業界紙「新文化」は2025年11月時点で40万部規模のヒット作になっていると報じ、宝島社は2026年6月25日に累計65万部突破を発表しています。

※画像はAIによるイメージ

この推移で注目したいのは、発売直後だけ話題になって終わった作品ではないことです。

2025年春から2026年夏のドラマ化直前まで、段階的に読者を広げています。

さらに「BUN-1グランプリ2025」では、『一次元の挿し木』がグランプリを獲得しました。

「新文化」の2025年11月5日付記事によると、210人の書店員から141点の文庫が挙げられ、10作品がノミネート。2025年8月1日から9月30日までのフェア期間中、10作品の総販売数が約1万1000冊だった中で、『一次元の挿し木』は2937冊を販売して1位となっています。

宝島社はさらに、同作が日販調べの2026年上半期ベストセラー「文庫」部門で1位になったと発表しています。

選考側が評価したのは「題材」だけではなかった

『一次元の挿し木』について語るとき、「200年前の人骨と失踪した妹のDNAが一致する」という設定の強さに注目が集まりがちです。

しかし、宝島社の商品ページに掲載された選考関係者の評価を見ると、注目されたのは設定だけではありません。

謎そのものの牽引力に加え、複数の謎の配置、話の進め方、情報を提示するタイミング、専門家としての主人公の描写、広げた物語を最後までまとめる構成力など、複数の観点から作品が評価されています。

僕はここに、ヒットの理由を考える重要な手がかりがあると思っています。

一行で人を振り向かせる謎がある。

しかし、一行だけでは一冊を最後まで読ませることはできません。

強い入口を作り、その奥に複数の謎を配置し、読者が迷子にならない速度で情報を渡していく。

「手に取る理由」と「最後まで読む理由」が別々に存在していたことが、『一次元の挿し木』が長く読者を増やした背景の一つではないかと僕は考えています。

松下龍之介の現在は?漫画原作とドラマ化へ活動が拡大

松下龍之介さんの創作活動は、『一次元の挿し木』一作だけにとどまっていません。

小学館の『黒と白の幸福論』では原作を松下龍之介さん、漫画を福永まこさんが担当しています。週刊コロコロコミックの公式作品ページでも両者のクレジットが確認できます。

デビュー前にSFと海外サスペンスを書き、デビュー作では科学と家族を軸にしたミステリーを発表し、その後は漫画原作にも活動を広げている。

この流れを見ると、現時点で松下さんを「DNAを扱うミステリーだけを書く作家」と定義するのは早いでしょう。

WEB別冊文藝春秋の2025年4月のインタビューでは、次の小説についてもミステリーを予定し、さまざまな本を読みながらテーマを考えていると説明していました。

僕が今後注目したいのは、題材そのものよりも「どんな疑問を入口に選ぶのか」です。

ループクンド湖の人骨という現実の情報から、失踪した妹とのDNA一致というフィクションの矛盾を作ったように、松下さんは遠く離れた情報を接続して物語を動かすタイプの作家に見えます。

次に、どんな二つの点を一本の線で結ぶのか。

そこに作家としての個性が、より鮮明に表れてくるのではないでしょうか。

『一次元の挿し木』は山田涼介主演で連続ドラマ化

原作小説『一次元の挿し木』は、2026年7月5日22時30分から読売テレビ・日本テレビ系で連続ドラマの放送が始まる予定です。

主演は山田涼介さん。読売テレビの公式サイトでは、200年前の人骨と失踪した妹のDNAが一致する謎へ挑むヒューマンミステリーとして紹介されています。

※画像はAIによるイメージ

作者プロフィール記事として重要なのは、ドラマの展開を詳しく追うことではありません。

僕が注目したいのは、会社員として創作を始め、3作目として書いたデビュー作が、一年以上にわたって読者を増やし、映像作品へ到達したという作家としての歩みです。

執筆開始から考えれば、決して一夜で起きた変化ではありません。

原稿を書いている最中には見えなかった景色が、何年も先で待っていた。

長い道を走っているとき、目的地はいつも見えているわけではありません。

夜の高速道路では、ヘッドライトが照らすのは少し先までです。

それでも進み続けることで、次の標識が見えてくる。

松下龍之介さんのデビューまでの歩みには、そんな静かな継続の強さを感じます。

松下龍之介はなぜ注目された?技術者経験と65万部ヒットを考察

ここからは、公表されている経歴、制作過程、販売の推移を踏まえた僕の考察です。

松下龍之介さんを「理系の技術者が科学ミステリーを書いた人」とだけ説明すると、最も面白い部分を見落としてしまう気がします。

僕が注目しているのは、専門知識の量そのものではありません。

知らない分野へ入る方法を知っていることです。

松下さんは遺伝子学の専門家ではありませんでした。

だからこそ、約半年間は基礎的な本を読み、作品全体では約3年をかけて調査を続けました。

一方、研究室の空気感には、自分が流体力学を研究した経験を使う。

さらに、書き進めながら人物の関係を広げ、応募規定に収める段階では人物や展開を削る。

これらは本人インタビューから確認できる制作過程です。

僕は、この一連の流れに技術者らしさがあるのではないかと考えています。

ただし、それは「高圧ポンプの知識を小説に使った」という意味ではありません。

分からないことを調べる。

仮の構造を作る。

動かしてみる。

問題があれば調整する。

不要な部分を削る。

もちろん、小説制作と機械設計を同じものだと断定することはできません。

それでも、公開されている制作過程を見る限り、松下さんの強みの一つが、複雑な情報を扱いながら全体を組み立てていく粘り強さにあると僕には感じられます。

「一行で説明できる謎」と「一行では説明できない物語」

『一次元の挿し木』が広がった理由について、僕はもう一つ重要な点があると考えています。

それは、作品の魅力を短く人に伝えられることです。

「200年前の人骨のDNAが、失踪した妹と一致する物語」

これだけで、矛盾と疑問が生まれます。

一方で、宝島社の商品ページに掲載された作品紹介や選考関係者の評価を見ると、その先には複数の謎、情報提示の工夫、人間の成長を含む物語があることが分かります。

入口は短い。

けれど、内部は深い。

僕は、この構造が口コミや書店での推薦と相性が良かった可能性があると考えています。

人は、面白かった作品を誰かに勧めるとき、その魅力を説明できなければなりません。

複雑すぎて説明できない作品は、たとえ素晴らしくても、口伝えの最初の一歩で苦労します。

『一次元の挿し木』は、物語全体を説明しようとすれば複雑です。

しかし、最初の謎は非常に伝えやすい。

そして実際に読めば、入口だけでは終わらない。

僕は、この説明しやすさと、読み終えたあとに考えたくなる複雑さの両立が、発売約3カ月の30万部から、2026年6月発表の累計65万部まで読者を広げた背景の一つではないかと見ています。販売の推移とBUN-1グランプリでの結果を考えると、少なくとも短期的な初動だけではなく、書店での展開を含めて継続的に読者との接点を増やした作品であることは確認できます。

科学の謎の中心に「家族を失った痛み」がある

もう一つ、僕が見逃せないのは感情の軸です。

『一次元の挿し木』の入口はDNAという科学的な謎ですが、主人公を動かしているのは、失踪した大切な家族の行方を知りたいという思いです。宝島社のあらすじでも、悠が妹の生死と古人骨のDNAの真相を追う物語であることが示されています。

科学的な謎だけなら、読者は頭で追います。

家族への思いだけなら、心で受け止めるでしょう。

この作品は、その二つを同時に走らせています。

DNAの数字や配列は冷静でも、それを見つめる人間の心は冷静ではいられない。

僕は、この温度差が作品を単なる知的パズルで終わらせず、より広い読者へ届かせた理由の一つだと感じています。

まとめ|松下龍之介は技術者経験と地道な調査を武器にする作家

『一次元の挿し木』の作者・松下龍之介さんは、1991年4月生まれ、東京都江戸川区出身の作家・技術者です。

千葉工業大学大学院工学研究科修士課程を修了し、宝島社の公式プロフィールでは、機械システム事業を扱う会社で火力発電所や製鉄所向け高圧ポンプの設計・技術提案に携わっていると紹介されています。

海外MBAへの進学を目指していた時期を経て、小説執筆を始めました。

1作目のSF、2作目の海外サスペンスを経て、3作目の『一次元の挿し木』が第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作となり、2025年2月5日に宝島社文庫から刊行されました。

同作は発売後も数字を伸ばし、宝島社の2026年6月25日発表では累計65万部を突破。2026年7月5日からは山田涼介さん主演の連続ドラマも放送開始予定です。

僕が松下龍之介さんの歩みから感じるのは、作家の個性は「最初から何を知っていたか」だけでは決まらないということです。

知らないものを、どこまで調べられるか。

小さな疑問を、どこまで育てられるか。

広がった枝を、作品として届く形にどこまで整えられるか。

『一次元の挿し木』は、現実に存在する人骨の情報をきっかけに生まれた疑問から始まりました。

その疑問は約3年のリサーチと執筆を経て一冊の文庫になり、多くの読者へ届き、漫画原作への活動拡大や原作のドラマ化という新しい景色へつながっています。

挿し木は、切り離された枝を別の場所で育て、新しい根を張らせる方法です。

人生もまた、最初に伸びようとした方向だけが正解ではないのかもしれません。

予定とは違う土に降りた一本の枝が、時間をかけて根を張り、思いもしなかった場所まで伸びていく。

松下龍之介さんの経歴を追いながら、僕の胸に残ったのは、華やかな65万という数字よりも、その数字へ至る前の静かな時間でした。

調べること。

書くこと。

削ること。

完成させること。

その積み重ねの先に、『一次元の挿し木』という大きな一本の木が立っているのだと、僕は感じています。

よくある質問

『一次元の挿し木』の作者は誰ですか?

作者は松下龍之介さんです。

1991年4月生まれの作家・技術者で、第23回『このミステリーがすごい!』大賞の文庫グランプリを受賞し、『一次元の挿し木』で小説家デビューしました。

松下龍之介の年齢と学歴は?

松下龍之介さんは1991年4月生まれで、2026年7月現在35歳です。

千葉工業大学大学院工学研究科の修士課程を修了しています。

『一次元の挿し木』は何部売れていますか?

宝島社の2026年6月25日付発表では、累計65万部を突破しています。

宝島社は2025年5月に発売約3カ月で30万部突破を発表しており、その後も読者を増やしました。

――岸本 湊人

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