『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』は兄弟の成長物語として面白い一方、マディが現在のドラムになる核心は残した前日譚です。
全4話で描かれたのは、少年マディと義兄ドラムが、クルバノフ家の後継者争いを乗り越えて本当の兄弟になるまででした。
この記事では、Episode 1〜4のあらすじと結末を整理し、子役の演技、脚本、演出、テンポ、名前の由来、話さない理由まで詳しくレビューします。
※ここからは全4話の結末を含むネタバレがあります。
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『ドラム VIVANT THE ORIGIN STORY』は面白い?感想と結論
結論から言えば、兄弟が信頼と誇りを取り戻す成長ドラマとしては面白いものの、現在のドラムの秘密を解く作品としては物足りません。
最初に、本作を見て判明したことと、最後まで分からなかったことを整理します。
本作で判明したこと
- 現在のドラムは、少年時代にはマディと呼ばれていた
- マディには、ドラムという義理の兄弟がいた
- 黄色の帯は「信頼」、青い帯は「誇り」を意味する
- 少年ドラムの名前には、父ダビドの願いが込められていた
- マディと少年ドラムは、一緒に世界を旅すると約束した
- 現在のドラムは、少年時代の出来事をジャミーンに語っている
本作だけでは判明しなかったこと
- マディが少年ドラムの名前を継いだ直接的な理由
- 少年ドラムが成長後にどうなったのか
- 現在のドラムが自分の声で話さなくなった理由
- 野崎守といつ、どこで出会ったのか
- 公安に協力し、世界を飛び回るようになった経緯
- 兄弟が約束した旅を実現できたのか
この二つを分けておくと、本作の評価が割れた理由も見えやすくなります。
『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』は、「マディがなぜ現在のドラムになったのか」をすべて説明する作品ではありません。
正確には、現在のドラムが受け継いだ価値観の原点を描き、その名前を継ぐ決定的な出来事は次の物語へ残した作品でした。
少年たちの関係が変化していく過程には、素直に胸を動かされます。
互いを警戒していた二人が、勉強や失敗、秘密の共有を通して距離を縮める姿は、派手なサスペンスとは違う温かさを持っていました。
その一方で、作品名には「ORIGIN STORY」とあります。
『VIVANT』本編で活躍するドラムの話し方や野崎との関係を知りたかった視聴者にとっては、物語が本当の起源へたどり着く直前で終わったようにも感じられます。
僕の胸に残ったのは、面白さと肩透かしが同時に存在する、不思議な余韻でした。
ドアは開いた。
けれど、その先にある部屋までは見せてくれなかったのです。
Filmarksの作品ページでは、2026年7月25日午前6時に確認した時点で平均評価3.4となっていました。
評価は投稿の追加によって変動しますが、確認できた感想には、子役の愛らしさや兄弟の物語を評価する声がある一方、「話さない理由を知りたかった」「マディがドラムになる経緯が分からない」という意見も見られました。
児童冒険ドラマとして見るか、人物の謎を解く考察ドラマとして見るか。
その期待の置き場所によって、満足度が大きく変わる作品だと僕は感じます。
Episode 1〜4では何が起きた?全話ネタバレと結末
『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』は、2026年7月12日から7月22日までU-NEXTで配信された全4話のサイドストーリーです。
配信スケジュールと各話タイトルは次の通りでした。
- Episode 1:7月12日「ボクはこうしてドラムになった」
- Episode 2:7月15日「テストで勝つ方法を教えてあげる」
- Episode 3:7月19日「ドラム大ピンチ!逆転の方法は?」
- Episode 4:7月22日「ドラムとの約束、そして冒険へ」
脚本は李正美さんと山本奈奈さん、プロデューサーは飯田和孝さんと戸村光来さん、演出は加藤亜季子さんと元井桃さんが担当しています。
出演者や制作陣、作品の基本情報は、U-NEXTが2026年7月5日に発表した作品情報を基準に確認しました。
Episode 1|マディがクルバノフ家の一員になる
物語の舞台は、数十年前のバルカです。
10歳の少年マディは、母アミーラの再婚により、裕福なクルバノフ家で暮らすことになります。
再婚相手のダビドは、クルバノフ家の次期当主と考えられている人物でした。
ダビドには、すでにドラムという実の息子がいます。
新しい家へ迎えられたマディは、ダビドから黄色の帯を渡されました。
この家で黄色は「信頼」を意味します。
それは血のつながりを超えて、今日から家族として信じるというダビドの意思表示でもありました。
しかし、少年ドラムはマディをすぐには弟として受け入れません。
突然現れたマディによって、父親の愛情や自分の居場所を奪われるのではないか。
少年ドラムの意地悪な態度の奥には、そんな恐れが見え隠れします。
同じ頃、クルバノフ家では後継者をめぐる対立が起きていました。
ダビドの弟ザウルは、自分の息子シャルハンを次期当主にしようと考えています。
一方、ダビドの息子であるドラムも後継者候補ですが、学校の成績ではシャルハンに負けていました。
マディは、ドラムが提出する作文を手伝います。
その作文が最優秀賞に選ばれたことで、マディは自分の知恵を使えば、ドラムを後継者争いで勝たせられると考えました。
そしてマディは、ドラムに「自分が勝たせる」と約束します。
第1話で興味深いのは、現在のドラムにつながる少年が、最初から身体能力と勇気を備えた万能な人物として描かれていない点です。
物語を動かす知恵を持っているのは、むしろマディでした。
相手の顔色を読み、状況を整理し、勝つための道筋を組み立てる。
本編でドラムが見せる機転の原点が、この少年時代にあったのだと感じさせる導入です。

Episode 2|テストの不正が兄弟の距離を縮める
毎年5月、学校では中学校の推薦候補を決めるための試験が行われます。
マディはドラムを勝たせるため、自分の解答を合図で伝える作戦を立てました。
二人の席を離すため、ほかの児童が腹痛を起こすクッキーまで利用します。
マディが教室の前方、ドラムが後方になるように席順を動かし、あらかじめ決めた合図で答えを送ったのです。
作戦は成功します。
ドラムはクラス1位となり、その後も二人は同じ方法で好成績を取り続けました。
最初はマディを拒絶していたドラムも、少しずつ彼を弟として受け入れるようになります。
一緒に勉強し、遊び、秘密を共有する。
血のつながりではなく、二人だけの時間が兄弟の輪郭を作っていく場面には、自然な温かさがありました。
ただし、物語の中心にあるのは明確な不正です。
兄弟が仲良くなる展開は微笑ましい一方、カンニングが成功体験として続くため、視聴中には少し居心地の悪さも残ります。
この違和感は、後半で二人が「勝利」と「誇り」のどちらを選ぶかにつながる仕掛けです。
爽快な作戦成功に見えていたものが、いつの間にか二人の心を縛る鎖へ変わっていきます。
一方、シャルハンはドラムの急激な成績上昇を不審に思います。
父ザウルからは、クルバノフ家を継ぐのはお前だと強い期待を背負わされていました。
シャルハンもまた、自分の意思だけで争っているわけではありません。
負ければ父親に認めてもらえないという不安が、彼をドラムへの敵意へ向かわせています。
子ども同士が戦っているように見えて、実際には親世代の劣等感と競争心が、その背中を押しているのです。
Episode 3|青い帯がドラムの罪悪感を映し出す
成績を急激に伸ばしたドラムは、教師マーシャから呼び出されます。
マーシャは、短期間で何があったのかと尋ねました。
ドラムは、クルバノフ家のために心を入れ替え、一生懸命に勉強したと説明します。
その言葉を信じたマーシャは、ドラムの成長を心から喜びました。
この場面から、物語の空気が変わります。
疑われている間は、嘘を守ることだけを考えればよかった。
しかし、信じてもらった瞬間から、その嘘は自分の心を傷つけ始めます。
人から信頼されることは、うれしい。
同時に、その信頼を裏切っていると知ることは苦しい。
ドラムの表情には、勝つ喜びよりも、真実を言えない重さが刻まれていました。
推薦を決める選抜試験を前に、父ダビドはドラムへ青い帯を贈ります。
青は「誇り」を表す色です。
ところが、ドラムはその帯を身につけようとしません。
自分が得た成績が、努力だけによるものではないと知っているからです。
試験は、これまでの単純な形式とは異なり、マディの合図だけでは答えられない内容でした。
追い詰められた二人は、マディがドラムの机の下へ隠れ、解答用紙を入れ替える作戦を決行します。
しかし、シャルハンも何も準備していなかったわけではありません。
過去15年分の試験問題を集め、ドラムの成績にマディが関わっていることにも気づいていました。
さらにマディは、自分たちが用意した腹痛を起こすクッキーを誤って食べてしまいます。
机の下から自由に動けなくなり、作戦は崩壊しました。
ドラムはついに、誰の力も借りず、自分自身で問題に向き合わなければならなくなります。
第3話は、全4話の中で最も緊張感が高い回です。
試験という小さな舞台でありながら、信頼を守るのか、家の期待に応えるのか、自分の誇りを選ぶのかという複数の葛藤が重なっていました。

Episode 4|不正を告白し、兄弟は世界を旅すると約束する
最終話では、シャルハンがクッキーの仕掛けを見抜いていたことが明らかになります。
机の下から逃げ出したマディは、シャルハン側の使用人に追われました。
その途中で学校へ羊の群れが入り込みます。
マディは羊を利用して追手を足止めし、ドラムを助けるために解答を作ろうとしました。
ところが、ドラムはマディの答えに頼りません。
自分の力で試験を終えることを選びます。
ここが、少年ドラムにとって最大の成長でした。
それまでの彼は、後継者として認められるためなら、不正な方法で結果を得ることも受け入れていました。
しかし青い帯に込められた「誇り」を考えたとき、勝つことよりも、嘘から降りることを選びます。
試験後、マディとドラムは、これまでカンニングをしていた事実をダビドに告白しました。
ドラムは青い帯を返します。
ダビドもまた、クルバノフ家の争いに子どもたちを巻き込んだ自分の責任を認めました。
シャルハンも推薦を得られず、少年ドラムはクラスメートの前で不正を告白します。
誰も後継者争いの勝者にはなりません。
けれど、子どもたちは大人たちが作った競争から一歩抜け出し、自分で選ぶ力を取り戻しました。
失敗を隠して勝つより、失敗を認めて立ち直る。
その選択によって、二人はようやく黄色の「信頼」と青い「誇り」を自分たちのものにしたのです。
物語の終盤で、マディとドラムは、いつか一緒に世界中を旅しようと約束します。
その後、場面は現代へ移りました。
現在のドラムは、ジャミーンに少年時代の物語を聞かせています。
この現代パートと回想のつながりによって、少年マディが、後に『VIVANT』本編で野崎守と行動するドラムになったことが示されます。
ジャミーンは、二人が本当に一緒に旅をしたのか、なぜマディが「ドラム」になったのかを尋ねました。
しかし、現在のドラムは明確な答えを返しません。
そこへ野崎から新たな指令が届き、ドラムは再び世界へ向かいます。
最終話が描いたのは、改名そのものではなく、改名につながる兄弟の約束まででした。
面白かった点は?子役の演技と家族の連鎖が物語を支えた
本作の一番の魅力は、マディと少年ドラムが本当の兄弟へ変わっていく過程です。
横井仁さんが演じるマディは、周囲を観察し、人の感情を読むことに長けた少年でした。
新しい家族の中で嫌われたくない。
自分を受け入れてほしい。
その願いが、ドラムを勝たせようとする行動へつながっています。
カンニングを考えるほど大胆でありながら、根底にあるのは家族になりたいという寂しさです。
横井さんは、その頭の良さと幼さを一つの表情の中で見せていました。
川田琥太郎さんが演じる少年ドラムも、単なる意地悪な兄ではありません。
父親の愛情を奪われる不安。
後継者として結果を出さなければならない重圧。
シャルハンに負け続ける焦り。
複数の感情が絡まり、それがマディへの攻撃として表れています。
二人の関係が変わる場面を、大げさな台詞だけで説明しなかったことも好印象でした。
勉強を教える。
同じ秘密を抱える。
相手の失敗をかばう。
小さな共同作業を積み重ねることで、二人の間に少しずつ信頼が生まれていきます。
兄弟になるということは、同じ家に住むことではありません。
同じ失敗を背負い、それでも隣に立つことなのだと、この物語は静かに伝えていました。
大谷亮平さんが演じるダビドには、優しい父親とクルバノフ家の次期当主という二面性があります。
マディを家族として迎え、ドラムの成長を信じようとする姿は温かい。
一方で、家の未来を守ろうとするあまり、息子に後継者としての期待を背負わせてしまいます。
最終話で自分の誤りを認める場面があるからこそ、ダビドは理想化された父親ではなく、失敗から学べる大人として成立しました。
ザウル役の渡辺銀次さんは、U-NEXTが2026年7月5日に発表したコメントで、ザウルを「劣等感の塊」と表現しています。
作品の中でも、ザウルは兄ダビドへの対抗心を息子シャルハンに背負わせていました。
その結果、シャルハンは自分の人生を生きるより先に、父親の敗北を取り返す役目を与えられます。
ダビドとザウル。
ドラムとシャルハン。
二組の対立関係を重ねた構造は、本作の脚本で特に優れていた部分です。
親の競争心は、言葉にしなくても子どもへ伝わります。
大人が握っていた古いステアリングを、子どもたちが告白によって手放す。
その瞬間、本作は学校の試験をめぐる物語から、家族の連鎖を止める物語へ変わりました。

脚本・演出・テンポはどうだった?良さと弱点をレビュー
脚本の長所は、黄色と青の帯を、人物の成長と結びつけた点です。
黄色は「信頼」。
青は「誇り」。
この二つの意味が、単なるクルバノフ家の風習ではなく、マディとドラムが物語の中で獲得すべき価値として機能しています。
マディは家族として信じてもらうために、黄色の帯を受け取りました。
少年ドラムは後継者として認められるために、青い帯を渡されます。
しかし、マディは秘密を抱えたことで信頼を失いかけ、ドラムは不正によって誇りを身につけられなくなりました。
最終話で二人が真実を告白することで、初めて帯の意味と生き方が一致します。
小道具を物語の主題へ変える脚本は、短編として分かりやすく、印象にも残りました。
演出面では、色の使い分けが効果的です。
黄色と青を画面の中で繰り返し見せることで、長い説明がなくても、信頼と誇りが二人の心に関わる重要な言葉だと伝わります。
また、バルカの乾いた風景と、子どもたちが通う学校の日常を並べたことで、『VIVANT』本編と同じ世界にありながら、より小さく親密な物語として差別化されていました。
Episode 4で羊の群れが学校へ入り込む場面は、本作の中で最も冒険活劇らしい見せ場です。
深刻になりすぎないユーモアを加えながら、マディの機転と行動力を映像で示しています。
現在のドラムが本編で見せる、危機の中でも明るさを失わない姿とも重なりました。
一方、テンポには明確な弱点があります。
全4話のうち、第2話と第3話の多くが、試験の不正と作戦の準備に使われています。
兄弟が仲良くなる過程や、罪悪感を育てるために必要な展開ではあります。
しかし「ドラムの起源」を知りたい視聴者にとっては、学校の試験に時間を使いすぎた印象も残りました。
試験の仕掛けを少し圧縮し、最終話の後半に次の場面を加えていれば、オリジンストーリーとしての満足度は上がったはずです。
- マディと少年ドラムが旅へ出る場面
- 二人が別々の道を歩むことになる出来事
- マディが「ドラム」と名乗る決意
- 野崎守との最初の出会い
- 音声アプリを使い始めた理由
現在の構成は、兄弟の物語としては一度きれいに完結しています。
ところが、現在のドラムにつながる物語として見ると、ちょうど核心の手前で幕が下ります。
予告やタイトルが大きな秘密の解明を期待させただけに、視聴後には「ここからが見たかった」という感情が残りました。
これは単純に説明不足というより、作品が選んだ着地点と、視聴者が期待した着地点が異なっていたことによる物足りなさだと考えます。
ドラムの名前の由来は?判明した事実と残された謎
「ドラム」という名前の最初の由来は、最終話で明らかになりました。
内戦下のバルカで敵に追われたダビドは、ドラム缶の陰へ隠れたことで命を救われます。
その経験からダビドは、強くたくましく、弱い人を守れる人間に育ってほしいという願いを込めて、自分の息子をドラムと名付けました。
ここで重要なのは、明らかになったのが少年ドラムの命名理由だという点です。
少年時代にマディと呼ばれていた人物が、後にその名前を受け継いだ直接的な理由は描かれていません。
作品タイトルの「ボクはこうしてドラムになった」という言葉には、二つの意味があります。
一つは、マディが少年ドラムとの生活を通して、現在につながる人格や価値観を育てたという意味。
もう一つは、マディが実際に「ドラム」という名前を名乗るようになった経緯です。
前者は全4話で丁寧に描かれました。
後者は、最終話のジャミーンの質問によって存在を強調されながら、答えが伏せられています。
つまり本作が描いたのは、戸籍や呼び名としての改名ではなく、精神的な継承でした。
現在のドラムが自分の声で話さない理由も判明していません。
少年時代のマディは、普通に言葉を話しています。
そのため、幼い頃から声を出せなかったわけではありません。
成長するまでの間に、何らかの出来事が起きた可能性があります。
ただし、病気、負傷、精神的な理由、任務上の事情など、具体的な原因を示す情報は本作にありません。
根拠のない事情を断定することはできないため、現時点では未解決の謎として扱うのが適切です。
野崎との出会いについても同様です。
現代のドラムは、野崎から届いた指令に応じて世界へ向かいます。
二人の間には、長い経験によって築かれた信頼があるように見えます。
しかし、その関係がいつ始まり、ドラムがなぜ協力するようになったのかは説明されませんでした。
少年時代の物語と『VIVANT』本編の間には、まだ大きな橋が必要です。
本作は、その橋のたもとまでは描きました。
しかし、向こう岸へ渡る場面は、次の物語に委ねられています。
僕の考察|マディが受け継いだのは名前より「弱い人を守る生き方」
ここからは、作中で確認できた事実をもとにした僕の考察です。
マディが「ドラム」という名前を受け継いだ理由には、少年ドラムとの旅の約束が関係している可能性があります。
二人は、いつか一緒に世界中を旅すると約束しました。
ところが現代のドラムは、ジャミーンから「二人で旅をしたのか」と尋ねられても、明確には答えません。
この沈黙は、約束がそのままの形では実現しなかったことを示しているようにも見えます。
少年ドラムが亡くなった、行方不明になった、あるいは家を継ぐためバルカに残った可能性も考えられます。
ただし、生死や所在については作中で明言されていません。
現段階で「亡くなった」と決めつけることはできません。
僕がより重要だと感じたのは、少年ドラムの行方よりも、現在のドラムがどのように生きているかです。
父ダビドは、強くたくましく、弱い人を守れる人物になってほしいという願いを、ドラムという名前に込めました。
その願いを、本編で実際に体現しているのはマディです。
現在のドラムは、野崎を信頼し、危険な場所にも同行します。
乃木や薫たちの危機を助け、幼いジャミーンにも優しく接していました。
自分の力を誇示するのではなく、誰かを守るために身体を動かす。
それは、ダビドが息子の名前に託した生き方そのものです。
少年マディは、義兄の名前だけを借りたのではない。
義兄が背負うはずだった願いまで受け継いだのではないでしょうか。
黄色の帯が示す信頼と、青い帯が示す誇り。
現在のドラムは、その両方を行動で示しています。
野崎との間には揺るがない信頼があり、危険な任務の中でも自分の役割を誇りとして果たしている。
少年時代に学んだ二つの価値観が、現在の彼の生き方を形作っているのです。
さらに、現在のドラムが世界を飛び回っていることも、兄弟の約束と重なります。
少年ドラムと一緒に旅ができなくなったとしても、マディはその名前を背負い、二人分の旅を続けているのかもしれません。
旅とは、隣に誰かがいることだけではありません。
胸の中に誰かとの約束を置き、その人が見られなかった景色まで見届けることも、旅の一つです。
ただし、この考察を物語上の答えにするには、改名に至る決定的な出来事が必要です。
少年ドラムとの別れがあったのか。
名前を託されたのか。
マディ自身が名乗ることを決めたのか。
その瞬間が描かれたとき、本作の黄色い帯と青い帯、兄弟の約束、現在のドラムの旅が一本の線につながるはずです。
U-NEXTが2026年7月5日に発表した作品情報では、飯田和孝プロデューサーが『VIVANT THE ORIGIN STORY』の展開にも触れています。
今後、ほかの人物の前日譚や、ドラムの物語の続きが制作されるなら、今回残された空白が回収される可能性があります。
回収されれば、『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』は単独で完結しない序章として再評価されるでしょう。
反対に、改名や話し方の謎が今後も描かれなければ、「一番知りたかった部分を伏せたまま終わった」という印象は残ります。
『VIVANT』本編は、乃木憂助やノコルをはじめ、人物の過去を一度に説明せず、現在の行動から少しずつ正体を見せる作品でした。
その作風を考えれば、ドラムの秘密を一作ですべて明かさなかったこと自体は理解できます。
しかしスピンオフには、本編とは別の役割もあります。
本編で語れなかった人物の核心を、一歩深く見せることです。
本作はドラムの心の原点には届きました。
次に必要なのは、その心が現在の姿へ変わった決定的な夜を描くことだと、僕は考えます。
まとめ|兄弟の成長は良作、ドラムの起源としては未完
『ドラム―VIVANT THE ORIGIN STORY―』は、少年マディと義兄ドラムが、後継者争いと試験の不正を通して、本当の兄弟になる全4話の物語でした。
横井仁さんと川田琥太郎さんが演じる少年たちには愛嬌があり、大谷亮平さんと渡辺銀次さんが演じる父親世代の対立も、家族ドラマに奥行きを与えています。
黄色の帯を「信頼」、青い帯を「誇り」の象徴として使い、親の競争を子どもたちが告白によって止める構成も印象的でした。
一方、マディが少年ドラムの名前を受け継いだ理由、現在のドラムが話さない理由、野崎との出会いは描かれていません。
僕の最終評価は、兄弟の成長ドラマとしては良作、現在のドラムの謎を解くオリジンストーリーとしては未完です。
ドラムという名前が生まれた理由は分かりました。
そして、その名前に込められた「弱い人を守る」という願いを、マディが受け継いだことも伝わります。
けれど、なぜ彼が兄の名前を背負う決意をしたのか。
その答えは、まだバルカの風の向こうに隠されたままです。
名前は、ただ人を呼ぶための音ではありません。
そこには誰かの願いがあり、守れなかった約束があり、ときには二人分の人生が刻まれます。
現在のドラムが明るい音声で笑いながら世界を駆ける姿を見るたび、僕はその隣に、もう一人の少年の影を感じずにはいられません。
よくある質問
『ドラム VIVANT THE ORIGIN STORY』は全何話?
全4話です。Episode 1は2026年7月12日、Episode 2は7月15日、Episode 3は7月19日、Episode 4は7月22日に配信されました。
U-NEXTで独占見放題配信と発表されていますが、配信状況は変更される可能性があるため、視聴前に最新情報を確認してください。
ドラムという名前の由来は明かされた?
少年ドラムの名前は、父ダビドが内戦中にドラム缶の陰へ隠れ、命を救われた経験に由来します。
強くたくましく、弱い人を守れる人物に育ってほしいという願いが込められています。ただし、マディが後にその名前を受け継いだ直接的な経緯は明かされていません。
現在のドラムが話さない理由は判明した?
判明していません。
少年時代のマディは普通に言葉を話しており、いつ、どのような理由で自分の声を使わなくなったのかは未解決です。野崎守との出会いや、公安に協力するようになった経緯も描かれていません。
――岸本 湊人(ドラマ評論家/ブログ戦略家)
観たいものが見つからない…
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