『豊臣兄弟!』第18話では、長浜城主となった秀吉と小一郎が家臣選抜を実施し、石田三成ら3人を秀吉、藤堂高虎を小一郎が迎えます。 スターネット+1
夜、画面が暗くなってから僕の胸に残ったのは、派手な勝利の余韻ではありませんでした。
出世した瞬間から、人は「自分が何をするか」ではなく「誰に任せるか」を問われ始める。
2026年5月10日に放送された大河ドラマ『豊臣兄弟!』第18回「羽柴兄弟!」は、まさにそんな転換点を描いた一話でした。
秀吉(池松壮亮)は織田家の家老へ昇格し、北近江を拝領。長浜城を築いて城持ち大名となります。
一方、小一郎(仲野太賀)は城下の統治を任されるものの、急拡大した仕事に対して家臣が足りません。
そこで竹中半兵衛(菅田将暉)の助言を受け、羽柴兄弟は子飼いの家臣を集めるための選抜試験を実施します。 シネマトゥデイ+1
そこに現れたのが、石田三成(松本怜生)、藤堂高虎(佳久創)、片桐且元(長友郁真)、平野長泰(西山潤)ら、のちの豊臣家を語るうえで欠かせない若者たちです。
合戦の勝敗を描く回ではありません。
けれど僕には、第18話で始まった「人を見つけ、人を配置する戦い」こそ、この先の天下統一を支える本当の土台に見えました。
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『豊臣兄弟!』第18話は何があった?秀吉が長浜城主へ出世
第18話の舞台は天正3年、1575年。
小谷城落城から約2年がたち、秀吉と小一郎を取り巻く環境は大きく変化していました。
NHK財団が運営するステラnetの歴史コラムによれば、浅井氏滅亡後の秀吉は信長から北近江3郡を与えられて小谷城へ入り、その後、琵琶湖岸に長浜城を築き、天正3年後半に入城しています。 スターネット
ドラマでも、秀吉は織田家家老へ昇格。
北近江を拝領し、長浜城を築いた城持ち大名として、新しい段階へ踏み出します。
百姓の家に生まれた兄弟が、ついに城と領地を動かす側へ回ったのです。
普通なら、ここで「大出世した!」という成功物語を大きく見せたくなるところでしょう。
ところが第18話は、城を手に入れたあとの苦労へ視線を向けます。
小一郎を待っていたのは「家臣不足」という現実
城ができても、それだけでは領地は治まりません。
年貢や物資を管理し、領民の問題に対応し、命令を伝え、道路や橋を整え、戦になれば兵や兵糧を動かす必要があります。
その実務を小一郎一人で抱えることはできません。
急速に出世した羽柴兄弟に足りなかったもの。
それが自分たちの手足となって働く家臣でした。
ここが第18話の重要なポイントです。
秀吉たちの成長速度に、組織の成長が追いついていない。
僕は見ながら、急拡大した会社のようだと感じました。
売上も仕事も一気に増えた。
けれど、人員や仕組みは昨日のまま。
外から見れば成功しているのに、内側では仕事が回らない。
城を持つということは、ゴールではありません。
むしろそこから、「自分以外の人間をどう動かすのか」という別の難しさが始まるのです。
半兵衛の提案で「子飼いの家臣」を募集
そこで竹中半兵衛が、子飼いの家臣を増やすよう進言します。
兄弟はその助言を受け、有能な若者を見つける選抜試験を実施します。
一見すると、戦国時代には似つかわしくない「就職試験」のような展開です。
しかし僕は、この設定がとても分かりやすいと思いました。
誰を採るのか。
何を評価するのか。
力だけを見るのか。
頭脳を見るのか。
それとも人柄を見るのか。
採用試験には、採る側の価値観が表れます。
つまり選抜試験を描くことで、第18話は「羽柴兄弟がこれからどんな組織をつくろうとしているのか」まで見せているのです。

家臣選抜試験の内容は?三成と高虎の違いが見えた3段階
家臣選抜には大勢の志願者が集まります。
そこで行われたのは、単純な腕力勝負だけではありませんでした。
試験を整理すると、羽柴家が求めていた人材像がよく分かります。
試験 主に試されたもの 印象的だった人物
第一段階・槍 度胸、観察力、冷静さ 三成ら
第二段階・米俵 計算、兵糧感覚、前提を疑う力 三成、高虎
第三段階・座禅 非常時の判断、命令への向き合い方 三成、高虎
最終選考・調略 交渉力、発想力、人間関係 三成、高虎、且元、長泰
この並びが実に面白い。
「戦が強い武士」だけを選ぶ試験になっていないのです。
戦える。
計算できる。
異変を察知できる。
人を動かせる。
領地を治めるためには、すべて必要です。
僕はここに、羽柴家が単なる武装集団から「統治する組織」へ変わっていく瞬間を感じました。
第一段階「槍」は勇気だけでなく観察力を試した
最初の試験では、蜂須賀正勝(高橋努)を相手に槍の試験が行われます。
開始すると、血を流して倒れる者が続出。
命まで奪われかねない光景に恐れをなし、逃げ出す志願者も相次ぎます。
しかし実際には仕掛けがあり、一部の受験者はそれを見抜いていました。
ここで試されていたのは、「怖がらないこと」ではありません。
怖い状況でも、目の前で本当に何が起きているのかを観察できること。
戦場で最も危険なのは、恐怖そのものより、恐怖で思考を止めてしまうことでしょう。
勇敢さと無謀さは似ています。
その境目をつくるのが、冷静に見る力なのだと思います。
第二段階「米俵」で三成と高虎の頭脳が分かれる
続いて用意されたのは兵糧をめぐる問題です。
積まれた俵を前に、100人が籠城するとしたら、用意された米で何日持たせられるかを考えます。
ここで三成は、米を粥にする方法を考え、20日と回答します。
一方の高虎は、計算する前に俵そのものを調べました。
そして、中身が米ではなく炭だと気づき、一日も持たないと答えます。 シネマトゥデイ
僕はこの場面が、第18話でも特に好きでした。
なぜなら三成と高虎が、同じ「賢い人」として描かれていないからです。
三成は、与えられた条件から最適な答えをつくる。
高虎は、そもそも与えられた条件が正しいのかを確かめる。
三成は問題を解く人。
高虎は問題そのものを疑う人。
どちらが上という話ではありません。
むしろ組織には、両方が必要です。
数字を正確に扱える人ばかり集めても、前提が間違っていれば全員で間違えます。
逆に何もかも疑う人だけでは、物事は前へ進みません。
異なる思考の人間が同じ場所にいることで、組織の死角は減っていく。
後に大きくなる羽柴家の姿を考えると、この違いを登場回から明確にしたことに意味があるように思えました。
第三段階「座禅」で命令と判断の違いが浮かぶ
第三段階では、志願者たちが密室で座禅を組みます。
その最中に火事を思わせる異変が発生。
ここでも実際の火災ではなく、受験者の判断を見るための仕掛けでした。
多くの者が逃げる中、三成は命令を守り、動こうとしません。
その三成を、高虎は座禅の姿勢のまま抱えて連れ出します。
石田三成役の松本怜生はNHK財団のインタビューで、この「座禅したまま運ばれる」形を撮影前に佳久創へ相談したことを明かしています。 スターネット
笑える場面ではあります。
でも、人物描写として見るとかなり深い。
三成は、一度与えられた命令を徹底して守る。
高虎は、状況が変わったと判断すれば行動を変え、人まで助ける。
命令を守ることと、目的を守ることは同じではない。
その違いが、二人の行動から見えてきます。
僕自身、仕事でも似たような場面を何度も見てきました。
決められた手順を正確に守る人が必要なときもあれば、「今日は状況が違う」と判断して進路を変えられる人が必要なときもあります。
ステアリングを切る角度は、人生の選択に似ています。
まっすぐ進むことが正しい道もあれば、そのまま進めば危険な道もある。
三成と高虎は、同じ道を違う目で見ているのです。

最終試験「調略」の結末は?三成が秀吉の前提をひっくり返す
試験を勝ち残ったのは4人。
- 石田三成
- 藤堂高虎
- 片桐且元
- 平野長泰
ところが秀吉が採用すると告げたのは3人です。
そこで最後の課題として出されたのが、4人のうち誰が仕官を諦めるのか、互いに調略することでした。 シネマトゥデイ
かなり意地の悪い問題です。
昨日まで一緒に試験を突破してきた相手を、最後は競争相手として落とさなければならない。
武力でも計算でもなく、人間関係そのものが試されます。
しかし三成は、ここで「4人から1人を落とす」という前提そのものを疑いました。
三成は自分の禄を半分にして4人採用を提案
三成が考えたのは、自分に与えられる禄を半分にしてでも4人全員を採用してもらう方法でした。
そして調略する相手として三成が向かったのは、ほかの3人ではありません。
採用人数を決めた秀吉本人です。
「誰か1人を説得して諦めさせろ」と解釈するのではなく、そもそも秀吉を説得して4人採用へ変えればいい。
実に三成らしい発想でした。
ステラnetの松本怜生インタビューでも、自分の禄を半分にして全員を採用してほしいと秀吉を調略する場面が紹介されています。
松本は、この行動について、三成は自分が不合格にされてもおかしくない状況なのに、目的を達成するためなら後先を考えず進む人物だと捉えています。 スターネット
ここで描かれたのは、「頭のいい三成」だけではありません。
正しいと思った瞬間に、自分の損得まで忘れて突っ走る三成です。
これは長所でしょう。
同時に、とても危うい。
その二面性を初登場回から見せていることが重要だと思います。
三成・且元・長泰は秀吉、高虎は小一郎の家臣に
最終的には、三成、片桐且元、平野長泰が秀吉側へ加わります。
そして藤堂高虎は、小一郎の家臣となりました。
NHK財団の歴史コラムでも、この時期にドラマで三成ら若い家臣が登場し、小一郎長秀が藤堂高虎を家臣に迎えたことが整理されています。 スターネット
ここで僕が面白いと思うのは、「優秀な4人だから4人とも秀吉が取る」という結末にしなかったことです。
高虎は小一郎のもとへ行く。
つまり人材を「合格」「不合格」だけで分けるのではなく、誰の下ならその能力が最も生きるのかまで物語にしているのです。
優秀な人材を集めれば良い組織になるとは限りません。
人と役割の組み合わせが合って初めて、その人の能力が力になる。
第18話の採用劇は、そこまで描いていました。

藤堂高虎はなぜ小一郎の家臣に?「力より知性」が重要
第18話で石田三成と並んで強い存在感を残したのが、藤堂高虎です。
高虎は近江の藤堂村、現在の滋賀県犬上郡甲良町の出身。
もとは浅井長政に仕え、姉川の戦いで初陣を経験した人物とされています。
浅井氏滅亡後には主君を変えながら、やがて小一郎長秀に仕えるようになったと考えられています。
NHK財団の歴史コラムによれば、高虎の子孫がまとめた記録には身長6尺2寸、約186センチの大柄な人物だったとの記述もあります。 スターネット
ドラマでも大きな体格は印象的です。
しかし、番組側が高虎に与えている人物像は「怪力の武士」だけではありません。
公式のキャスト紹介では、高虎は秀長との出会いを経て算術、鉄砲、築城などを学び、中国攻めや賤ヶ岳の戦いに参加し、兵站も任される知勇兼備の武将へ成長すると説明されています。 スターネット
だからこそ、第18話で高虎が米俵の中身を調べたことにも意味があります。
計算の問題を出されたからといって、すぐ計算しない。
まず現物を見る。
さらに危険を感じたときには、動かない三成まで抱えて連れ出す。
見る。疑う。決める。動く。
この一連の能力は、のちに築城や兵站でも力を発揮する高虎像へ自然につながっています。
小一郎は高虎の「欠点の裏側」を見ていた
高虎は、一見すると扱いやすい家臣ではありません。
豪快で、時には型破り。
主君を何度か変えた経歴だけを見れば、「忠誠心は大丈夫なのか」と思う人もいるでしょう。
しかし番組のキャスト紹介で高虎役の佳久創は、高虎について調べるうちに、単に主人を次々変えたのではなく、自分を正しく評価してくれる主人へ力を尽くした人物だという印象に変わったと語っています。 スターネット
ここに、小一郎との相性が見える気がします。
秀吉は、人を巻き込む強烈なエネルギーを持っています。
対して小一郎は、人を観察し、能力が生きる場所を見つけることに長けている。
少なくとも第18話は、そういう対比を意識しているように僕には見えました。
頑固さは、信念にもなる。
疑い深さは、観察力にもなる。
型破りは、非常時には決断力へ変わる。
短所と長所は、時に同じ一本の木の表裏です。
だから人を見るとは、「欠点のない人」を探すことではない。
その特徴が、どこなら武器になるのかを見ること。
高虎を迎えた小一郎の選択は、天下一の補佐役となる彼自身の人材観まで映しているように感じられました。
家臣選抜試験は史実?ドラマ独自設定と史実を分けて考える
ここは検索する人が特に気になるところでしょう。
結論から言うと、第18話で描かれたように、三成・高虎・片桐且元・平野長泰がそろって家臣採用試験を受けた史実が確認されているわけではありません。
NHK財団の歴史コラムでも、実際には家臣たちの仕官時期はばらばらで、ドラマのような選抜試験が行われたわけではないと説明されています。 スターネット
ここはドラマと史実を明確に分けておく必要があります。
「試験が面白かったから本当にあった」と受け取ってしまうのも違いますし、逆に「創作だから意味がない」と切り捨てるのも、少しもったいない。
なぜなら脚本は、複数の時期に起きた「羽柴兄弟の周囲へ有力な家臣たちが集まってくる」という歴史の流れを、家臣選抜という一つの出来事へ圧縮しているからです。
歴史ドラマにおける創作には、史実を変える創作だけでなく、散らばった史実を理解しやすい形へ束ねる創作があります。
第18話はこちらに近いと僕は感じます。
石田三成の「三献の茶」と違う出会いを採用
三成と秀吉の出会いといえば、「三献の茶」の逸話が有名です。
寺にいた若い三成が、喉の渇いた秀吉へ量や温度を変えながら茶を出し、その機転を評価されて召し抱えられたという話です。
『豊臣兄弟!』は、その有名な出会いをそのまま使いませんでした。
代わりに、三成を家臣選抜試験へ参加させています。
三成役の松本怜生自身も、ステラnetのインタビューで、三献の茶とは異なり試験で選ばれる今回の設定を新鮮だと受け止めています。 スターネット
僕はこの変更には意味があると思います。
三献の茶を使えば、三成の「気配り」や「機転」を一場面で見せられる。
一方、選抜試験なら、
計算力。
命令への忠実さ。
他者との関係。
目的へ突き進む性格。
これらを一度に見せられます。
つまり第18話は「秀吉と三成がどう出会ったか」より、この作品では三成をどういう人物として描いていくのかを優先したのでしょう。
実は「俳優のオーディション」と物語が重なっている
そして僕が第18話で最も興味深いと感じたのが、ここです。
作中では若者たちが家臣選抜試験を受けます。
一方、現実の『豊臣兄弟!』でも、石田三成役の松本怜生や藤堂高虎役の佳久創らを含む一部キャストは、実際にオーディションを経て選ばれています。
NHK財団が2025年4月に伝えた新キャスト発表でも、豊臣兄弟と深く関わる重要人物のうち5人をオーディションで選抜したことが明らかにされています。 スターネット
さらに松本怜生も、自身が大河ドラマのオーディションを受けて三成役に決まった経緯を語っています。
つまり第18話には、
家臣になる若者を選ぶ秀吉たち。
その家臣を演じる若手俳優を選んだ制作陣。
という二重の「選抜」が重なっています。
これは単なる裏話以上の面白さがあります。
初登場の4人からは、どこか役者自身の「ここから大河で自分の役を生きていく」という初々しい緊張感まで伝わってくる。
作中の若武者たちが新しい羽柴家へ入る瞬間と、俳優たちが大河ドラマという巨大な作品へ入る瞬間が重なる。
僕には、その二重構造が第18話独特のフレッシュさを生んでいるように感じられました。
これは、史実だけを追っていても見えにくい、この回ならではの味わいです。
考察|第18話は「天下取り」の前に必要な組織づくりを描いた
ここからは僕の考察です。
第18話の本当のテーマは、石田三成登場でも、藤堂高虎登場でも、長浜城完成でもない。
僕は「組織をつくること」だったと思っています。
これまでの兄弟は、自分たちが動くことで状況を変えてきました。
秀吉が走る。
小一郎が支える。
半兵衛が策を出す。
危機が来たら、本人たちが前へ出る。
しかし城と領地を持った瞬間、それでは足りなくなります。
兄弟がどれだけ働いても、身体は二つしかありません。
出世すればするほど、自分ではできない仕事が増えていく。
だから次に必要になる能力は、「自分が何でもできること」ではありません。
自分にできない仕事を任せられる人を見つけることです。
ここに第18話の成熟があります。
4つの試験は「戦国大名の組織」を小さく再現していた
試験の内容を改めて見ると、
槍では現場対応。
米俵では兵糧と数字。
座禅では非常時の判断。
調略では交渉と人間関係。
が問われています。
天下を取る組織に必要な機能が、小さな試験の中へ配置されているように見えませんか。
戦だけ強くても国は治まりません。
兵糧を読む者が必要。
城や道路を見る者が必要。
交渉する者が必要。
書類や数字を扱う者も必要。
命令を守る者も、状況によって命令から一歩踏み出す者も必要です。
戦国大名になるとは、最強の武将になることではない。
異なる能力を持つ人々を、一つの目的へ向かわせること。
第18話は、それをコミカルな「家臣オーディション」という形で見せたのだと思います。
三成と高虎は「正反対だからこそ」同じ組織に必要
三成と高虎の対比も象徴的です。
三成は条件から答えを導く。
高虎は条件を疑う。
三成は命令を守り抜く。
高虎は危険を感じれば自分の判断で動く。
三成は論理から進む。
高虎は現場から進む。
どちらが正しいか。
僕は、答えを一つに決めること自体が違うと思います。
平時なら三成の正確さが力になる。
想定外の事態なら高虎の判断力が救いになるかもしれない。
一つのタイプだけで組織を固めると、そのタイプの弱点も組織全体へ広がります。
だから違う人間が必要なのです。
三成の死角を高虎が埋める。
高虎の粗さを三成の理屈が補う。
チームとは、欠点のない人間を集めることではありません。
互いの死角を埋められる人間を集めること。
第18話を見て、僕の胸に強く残ったのはそこでした。
三成の「全員採用」は美点であり未来の危うさでもある
三成が自分の禄を削ってでも4人を残そうとする姿は爽快です。
一人を犠牲にして自分だけ残るのではなく、仕組みを変えて全員が残れる方法を考える。
知性だけでなく、情のある人物としても見える場面です。
しかし、僕は少し怖さも感じました。
三成は、「これが正しい」と思った瞬間に自分の損得まで視界から消える。
秀吉に逆らった結果、自分まで不採用になる可能性より、今の目的を優先する。
松本怜生の人物解釈とも重なりますが、これは三成の強さであると同時に危うさでしょう。
正しい方向へ全力で走れる人間は強い。
けれど周囲の人間が、いつも同じ速度で走れるとは限りません。
理屈として正しいことと、人がついてくることも同じではない。
後の石田三成を知っている視聴者ほど、この若い三成の真っすぐさに未来の影を感じたのではないでしょうか。
脚本がそこまで意図しているかは断定できません。
ただ僕には、初登場の時点ですでに「長所と悲劇の種が同じ場所にある人物」として描いているように見えました。
小一郎の武器は「人を勝たせる場所」をつくること
そして主人公・小一郎です。
秀吉が持つ力は、前へ進み、人を熱狂させる力。
対して第18話の小一郎から見えたのは、人を見て、その能力が生きる場所をつくる力でした。
高虎は、秀吉の家臣3人からは外れました。
でもそれは敗北ではありません。
小一郎という別の主君のもとに、役割が生まれた。
ここが美しい。
採用試験で大切なのは、誰を落とすかではなかった。
誰を、どこへ置けば生きるか。
天下統一の物語では、どうしても領地を「取る」側が目立ちます。
しかし大きな組織を長く保つには、取った場所に人を置き、人が働ける環境をつくる者が必要です。
兄が領地を取る。
弟が、人の居場所をつくる。
もし第18話がこの兄弟の役割分担を示しているのだとすれば、高虎が小一郎の家臣になる展開には大きな意味があります。
小一郎は、兄の後ろを歩くだけの弟ではない。
兄が集めた力を、組織として機能させる人物へ変わり始めている。
僕にはそう見えました。
まとめ|『豊臣兄弟!』第18話は羽柴家臣団が動き始める重要回
『豊臣兄弟!』第18回「羽柴兄弟!」では、秀吉が北近江を拝領し長浜城を築いたことで、羽柴兄弟の立場が大きく変わりました。
出世した一方、小一郎は領地を治める人手不足に直面。
半兵衛の助言から、若い子飼いの家臣を集める選抜試験が始まります。
そこで存在感を示したのが、石田三成、藤堂高虎、片桐且元、平野長泰でした。
槍。
兵糧。
座禅中の異変。
そして最終試験の調略。
試されたのは武力だけではなく、観察力、計算力、判断力、交渉力です。
三成は最終段階で、自分の禄を半分にしてでも4人全員を採用するよう秀吉本人を説得する発想を見せました。
その結果、三成、且元、長泰は秀吉側へ加わり、高虎は小一郎の家臣となります。
一方、史実ではドラマと同じ一斉選抜試験が行われたと確認されているわけではありません。
仕官時期の異なる人材たちが羽柴兄弟の周囲へ集まっていく歴史の流れを、「家臣選抜」という分かりやすいドラマへ再構成したものとして見るのが適切でしょう。
そして僕が第18話で最も面白いと思ったのは、作中の家臣たちだけでなく、彼らを演じる俳優の一部も実際のオーディションを経て選ばれていることでした。
若い家臣が羽柴家の一員になる。
若い俳優が大河ドラマの一員になる。
二つの「選ばれる瞬間」が重なったからこそ、第18話にはほかの登場回とは少し違う、新しい風が吹いていたのかもしれません。
天下取りというと、大軍同士がぶつかる戦を思い浮かべます。
でも、本当の天下は戦に勝っただけではつくれません。
一人を見つける。
一人を信じる。
仕事を任せる。
違う才能を同じ方向へ向ける。
その積み重ねが、やがて巨大な政権になる。
天下を取る前に、天下を支えられる人を集めなければならない。
僕にとって『豊臣兄弟!』第18話は、そんな当たり前で、しかし難しい「組織づくりの第一歩」を描いた回でした。
城の石垣が一つずつ積み上がるように、羽柴家にも人と人とのつながりが積み上がっていく。
画面が暗くなったあとも僕の胸には、新しい羽柴家が動き始める足音が、静かに響き続けていました。
よくある質問
『豊臣兄弟!』第18話の放送日はいつ?
第18回「羽柴兄弟!」は2026年5月10日(日)に放送されました。
秀吉が城持ち大名となり、羽柴兄弟が家臣不足を補うため若い人材の選抜へ乗り出す回です。
第18話で石田三成と藤堂高虎は誰の家臣になる?
石田三成は秀吉側の家臣となり、片桐且元、平野長泰も加わります。
藤堂高虎は小一郎の家臣となり、この後、秀長を支える重要な存在へ成長していきます。
家臣選抜試験は本当に史実にあった?
ドラマと同じ形式の家臣選抜試験が行われた史実は確認されていません。
NHK財団の歴史解説でも、実際の家臣たちの仕官時期はそれぞれ異なると説明されています。第18話は、人材が羽柴兄弟の周囲へ集まっていく歴史的な流れを、一つの選抜試験へまとめたドラマ上の再構成と考えるのが自然です。
――岸本 湊人
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