クライマックス間近!『豊臣兄弟』25話をネタバレ解説。明らかになる黒幕の正体

ブログ用横長1200×800px想定、比率6:4。1580年代の絢爛な安土城を背景に、中央奥には天下統一目前の絶対的権力をまとった織田信長を思わせる武将のシルエット。手前には「信長を討て」という意味を持つ足利義昭名義の御内書を見つめ、驚きと迷いを浮かべる明智光秀を思わせる武将。そ 大河ドラマ
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『豊臣兄弟!』25話は、重臣追放と四国政策の転換、義昭名義の密書が本能寺への導火線になる回です。

ただし重要なのは、第25回で明智光秀に届いた「足利義昭の密書」は、義昭本人が送ったものではなかったこと。翌第26回のラストで、織田信澄が自分で書いたと告白しています。シネマトゥデイ

2026年6月28日放送の第25回「変事の予兆」を振り返りながら、安藤守就らの追放、蜂須賀正勝の龍野城主就任、長宗我部元親と信長の決裂、光秀の苦境、そして第26・27回を見て初めて分かる信澄の伏線まで整理します。

※この記事は第25回に加え、第26回「信長を笑わせろ!」、第27回「本能寺の変」のネタバレを一部含みます。

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豊臣兄弟25話ネタバレ結論|何が起きた?本能寺への「火種」が一気につながる

第25回「変事の予兆」は、その題名の通り、本能寺の変が突然起きたのではなく、その前に複数の人間関係が崩れ始めていたことを描いた回でした。

NHK財団が運営するステラnetの公式系あらすじでは、完成した安土城の祝宴で、信長(小栗旬)が林秀貞(諏訪太朗)、佐久間信盛(菅原大吉)、安藤守就(田中哲司)ら長老格の重臣を森乱(市川團子)との相撲に出し、その後に追放を告げる展開が紹介されています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア+1

しかし25話は、重臣追放だけの回ではありません。

大きな流れを整理すると、次のようになります。

  • 秀吉が蜂須賀正勝を龍野城主に任命する
  • 安土城の祝宴で林秀貞、佐久間信盛、安藤守就が追放される
  • 小一郎が追放理由を探り、安藤定治の武田方への内通が判明する
  • 長宗我部元親が安土城に現れ、信長との良好な関係が描かれる
  • その後、信長が長宗我部の「四国切り取り」を認めない方向へ転換する
  • 仲介役の明智光秀が元親との板挟みに追い込まれる
  • 織田信澄が、足利義昭名義で「信長を討て」と促す御内書を光秀へ届ける
  • 第26回ラストで、その御内書を書いたのは信澄だったと判明する

25話を理解するうえで、ドラマと史実を分けるとさらに分かりやすくなります。

出来事 ドラマでの描写 史実を見る際の注意点
重臣追放 安土城の相撲後に林・佐久間・安藤を追放 実際に相撲の敗北で3人が同時追放された史実ではない
安藤家の内通 息子・定治が武田方への内通を認める 守就の内通を記す後世史料はあるが追放理由は確定していない
長宗我部問題 信長が認めていた四国攻略を覆す 史実でも信長の四国政策は長宗我部に厳しい方向へ変化した
義昭名義の御内書 信澄が光秀へ届ける ドラマ独自の展開。第26回で信澄による偽造と判明

この整理が大切です。

25話のラストだけを見ると「足利義昭が本能寺の黒幕なのか?」と考えたくなります。

けれど後続回まで見ると、これは答えではなく巧妙に仕掛けられたミスリードでした。

僕の胸に残ったのは、誰か一人が突然反逆者になったのではないことです。

人の心は、刀のように一瞬で折れるものではありません。

細いひびが入り、それでも耐え、またひびが増える。

第25回は、その「ひび」があちこちで同時に走り始めた一話でした。

蜂須賀正勝の龍野城主就任が冒頭に置かれた意味

不穏な25話ですが、冒頭には温かな場面があります。

秀吉(池松壮亮)は蜂須賀正勝(高橋努)に龍野城の修築を任せるような話を持ちかけ、最後に正勝本人を龍野城主にすると明かします。

MANTANWEBによる放送後の記事では、この場面は開始から約1分半で登場。秀吉は正勝と出会ったころ、「3年後には城持ちにする」という趣旨の約束をしていましたが、実際に果たされたのは15年後だったと紹介されています。まんたんウェブ

約束は遅れた。

でも、忘れてはいなかった。

この場面を25話の最初に置いたことには、僕はかなり大きな意味を感じます。

なぜなら、このあと描かれる信長は、長く仕えた家臣を切り、長宗我部元親との約束まで変えていくからです。

約束を15年越しに果たす秀吉。

天下の情勢に合わせ、かつての約束を変更していく信長。

どちらが善で、どちらが悪という話ではありません。

けれど人を束ねる者にとって、「以前に交わした言葉」がどれほど重いのか。

25話はその違いを、説明台詞ではなく二人の行動で見せています。

僕はここに、のちに秀吉が人を引きつけて天下へ駆け上がっていく理由の一端まで重ねて見てしまいました。

※画像はAIによるイメージ

安土城の相撲でなぜ重臣追放?安藤守就・佐久間信盛・林秀貞の悲劇

25話前半の空気を一変させるのが、安土城完成を祝う宴です。

本来なら信長の栄華を象徴する華やかな場所。

そこで信長は、若き近習・森乱を相手に、林秀貞、佐久間信盛、安藤守就ら長老格の家臣へ相撲を命じます。

三人が敗れると、待っていたのは笑いではありませんでした。

追放です。

森乱役の市川團子さんは、第25回について、信長から相撲の相手を命じられた時点で、森乱は「裏切りの疑いがある家臣を罰するためのもの」という意図を理解して演じたと説明しています。オリコンニュース(ORICON NEWS)

つまりドラマ上でも、相撲で負けたこと自体が本当の罪ではありません。

華やかな祝宴は、追放を告げる舞台装置だったのです。

その落差が怖い。

黄金色の安土城が完成した瞬間から、織田家の内部では黒い影が伸び始める。

まるで頂上に立った瞬間、足元の崖が初めて見えるような演出でした。

史実では安藤守就らは相撲で追放されていない

ここはAccuracyを高めるため、ドラマと史実を明確に分けておきます。

東京大学史料編纂所准教授・遠藤珠紀氏によるステラnetの歴史解説では、史実の安藤守就は天正8年(1580)8月17日に信長から追放されました。林秀貞や丹羽氏勝も追放され、直前には佐久間信盛父子も処分されています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

一方で、ドラマのように森乱との相撲に敗れたことが理由だったわけではありません。

さらに史実では、当時の羽柴兄弟は播磨におり、この追放劇に立ち会っていないと解説されています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

ここは非常に大切です。

『豊臣兄弟!』は史実をそのまま再現するドキュメンタリーではなく、歴史上の出来事を秀長の目線に組み替えたドラマです。

だからこそ僕は、「実際に起きたこと」と「脚本が人間ドラマとして再構成した部分」を分けて味わうのが、この作品のいちばん面白い見方だと思っています。

史料上でも、追放理由はすっきり確定していません。

『信長記』には、林秀貞や安藤守就について、信長が苦境にあった時期に野心を抱いたことが理由だったという趣旨が記されるものの、具体的に何をしたのかまでは明確ではありません。

一方、江戸時代に成立した複数の史料には、守就が武田信玄と通じたためとする記述もあります。ただし信玄は1573年に死去しており、守就の追放とは8年ほど離れています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

つまり、「安藤守就は武田に内通したから追放された」と史実まで断定するのは危険です。

ドラマは、その史料上の曖昧さを利用して、別の物語を作りました。

それが息子・安藤定治です。

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安藤定治はなぜ武田に内通した?戦い続ける織田家への疲弊

義父・安藤守就の追放を納得できない小一郎(仲野太賀)は、理由を探し始めます。

そこで浮かび上がったのが、守就本人ではなく嫡男・安藤定治(森優作)でした。

小一郎は稲葉良通(嶋尾康史)の言葉から定治に疑いを持ち、守就が息子を問い詰めます。

そして定治は、武田方への内通を認めました。

マイナビニュースの放送分析によれば、この場面は第25話で特に高い注目を集めたシーンの一つ。定治は、織田に従って以来、戦が終わらず、親しい家臣も次々に死んでいったという苦しみを打ち明けています。マイナビニュース

僕はここで、25話の見方が変わりました。

これは裏切り者を暴く場面ではありません。

戦国時代を生きることに耐えられなくなった一人の人間を描く場面だったのです。

信長から見れば、戦は天下統一へ向かうために必要な過程でしょう。

戦に勝つ。

領土を広げる。

敵を減らす。

そうすれば、いつか戦のない世が来る。

理屈は通っています。

けれど、その「いつか」に到達する前に、人の心が壊れてしまったらどうなるのか。

定治はそこに耐えられませんでした。

「次の戦」が来るたびに誰かが死ぬ。

勝っても終わらない。

また戦場へ行く。

この感覚は、本能寺の変に向かう25話だからこそ重く響きます。

信長は止まれない。

しかし家臣全員が信長と同じ速さで走れるわけではありません。

僕自身、人生で「前へ進むことが正しい」と思い込みすぎて、周囲の疲れに気づけなかったことがあります。

アクセルを踏み続ける人には、止まった人が怠けているように見えることがある。

でも本当は、エンジンが焼き切れる寸前なのかもしれない。

第25回の定治は、信長の天下統一という大きな物語を、末端で生きる者の目から見直させる人物でした。

※画像はAIによるイメージ

安藤守就の追放が小一郎に突きつけたもの

守就は慶(吉岡里帆)の父であり、小一郎にとって義父です。

だからこの追放は、単なる織田家の人事ではありません。

主人公の家庭にまで、信長の政治判断が入り込んできた瞬間でした。

ここが『豊臣兄弟!』らしい。

信長、光秀、長宗我部という歴史上の大人物だけを追っていたら、家臣追放は「信長政権の再編」で終わります。

しかし小一郎を主人公に置くことで、

「もし追放された家臣が、自分の妻の父だったら?」

という感情の問題に変わります。

守就を助けたい小一郎。

一方で、自分たちのことで羽柴家に迷惑をかけたくない守就。

近づきたいからこそ離れるしかない。

戦国時代の政治が、家族の食卓まで壊していく。

僕はこの距離感こそ、大河ドラマで秀長を主人公にする意味なのだと思います。

長宗我部元親との約束を信長はなぜ覆した?明智光秀が追い詰められた理由

第25話の後半、本能寺の変への伏線はさらに鮮明になります。

鍵を握るのが、長宗我部元親(磯部寛之)と明智光秀(要潤)です。

安土城の祝宴では、元親が能の演者として現れるサプライズもありました。

能面を外した人物が元親だったという登場で、信長との関係はまだ良好。

信長は元親の四国での「切り取り」、つまり自力で攻略した土地を支配していくことについて、進めることを認める姿勢を示しています。シネマトゥデイ

ところが、その関係は同じ回の終盤で反転します。

京都の馬揃えの後、信長は光秀に対して、長宗我部の四国切り取りをこれ以上認めない方針を伝え、元親を説得するよう命じます。シネマトゥデイ

光秀は驚きます。

当然でしょう。

つい先ほどまで認められていた話を、仲介役の自分が「やはり駄目になった」と伝えなければならない。

これは外交を任されてきた人間にとって、かなり厳しい立場です。

史実でも光秀は長宗我部との仲介役だった

ここはドラマだけの創作ではありません。

遠藤珠紀氏による歴史解説では、信長と元親の交流は天正6年ごろから確認でき、信長は元親による阿波への進出を認めていました。

元親は信長の承認を背景に、阿波・讃岐・伊予へ勢力を広げていきます。

そして、両者の仲介役を務めていたのが明智光秀でした。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

光秀の家臣・斎藤利三の親族と長宗我部家には婚姻関係があり、元親が四国での戦況を光秀経由で信長に報告した書状も残されています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

ところが大坂本願寺との戦いが終結すると、信長を取り巻く外交環境が変わります。

天正9年には三好康長を阿波へ送り、翌天正10年には長宗我部に対して厳しい条件を示す方向へ転換。

最終的には信長の三男・信孝を中心とする四国攻略へ動きました。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

元親から見れば、これまでの関係を一方的に変更されたように映る。

光秀から見れば、自分が築いてきた外交関係と信用を主君の命令で崩さなければならない。

歴史解説でも、こうした政策変更が仲介役・光秀の面子をつぶす形となり、四国問題が本能寺の変の一因として論じられてきたことが紹介されています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

※画像はAIによるイメージ

ただし、ここで注意したいことがあります。

「四国政策の変更だけが、本能寺の変の原因だった」と断定することはできません。

光秀の動機については現在も決定的な一つの答えがあるわけではありません。

だから僕は、『豊臣兄弟!』25話の脚本が一つの理由だけに絞らなかったことを評価したいです。

重臣追放。

戦い続ける家臣の疲弊。

長宗我部との約束変更。

仲介役・光秀の立場悪化。

そして義昭名義の御内書。

一つ一つなら、まだ耐えられたかもしれない。

しかし不信は一本ではなく、何本も重なっていく。

その先に本能寺がある。

刀を抜いた瞬間ではなく、刀を抜いてもおかしくない心の地形が作られていく過程を25話は描いていたのだと思います。

豊臣兄弟25話の義昭の密書は偽物|織田信澄が第26回で告白

そして第25話最大の引きが、足利義昭(尾上右近)名義の御内書です。

四国政策をめぐって苦境に立った光秀の前に、織田信澄(緒形敦)が現れます。

信澄が届けた文には、義昭から光秀へ信長討伐を促しているように受け取れる内容が記されていました。

25話だけを見れば、

「足利義昭が明智光秀を動かし、本能寺の変を起こさせるのか?」

と考えるのが自然です。

義昭はかつて信長の力を借りて第15代将軍となったものの、その後は信長と対立し、京を追われています。

しかも光秀は、信長に仕える以前から義昭と深い関わりを持った人物。

視聴者が「義昭黒幕説」を連想する条件はそろっていました。

ところが第26回「信長を笑わせろ!」のラストで、この構図がひっくり返ります。

光秀から「信長の疑いが晴れてよかった」と声をかけられた信澄は、義昭から来たとされていた御内書について、自分が書いたものだと告白。

シネマトゥデイも、第26回ラストで信澄が御内書を書いた本人だと明かしたことで、視聴者に衝撃が走ったと報じています。シネマトゥデイ

つまり、正確に整理するとこうです。

第25回で「義昭から届いたように見えた御内書」=信澄が偽造したもの。

したがって、この記事のタイトルでいう「義昭の密書」は、厳密には「義昭名義の偽の御内書」です。

この区別をしないまま「足利義昭が光秀へ密書を送った」と書いてしまうと、第26回以降の展開と矛盾します。

ここは25話を検索してきた読者に、最も先に伝えておきたいポイントです。

※画像はAIによるイメージ

第27回で分かる信澄の「父・信勝への思い」

では、なぜ信澄はそんな御内書を作ったのでしょうか。

答えは第27回「本能寺の変」で、より明確になります。

信澄の父は、信長の弟・織田信勝(中沢元紀)です。

ドラマでは、信澄は母・ちよ(樋口日奈)から、父の無念を晴らし、いつか信長を討つよう繰り返し言い聞かされながら育った人物として描かれました。

信澄役の緒形敦さんも、NHK財団のインタビューで、今作の「兄弟」というテーマにおいて、秀吉・小一郎兄弟とは対照的な信長・信勝兄弟の因縁を受け継ぐ重要人物として信澄を捉えていたと語っています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

ただし面白いのは、信澄が信長を憎んでいるだけではないことです。

緒形さんは、信澄には信長への憎しみと同時に、憧れや尊敬もあったのではないかと考えて演じたと説明しています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

ここで人物が一気に立体的になります。

憎い。

でも偉大だと思う。

父の仇だ。

でも自分をここまで育て、織田家の一員として扱ってくれた。

復讐したい。

でも心のどこかでは認められたい。

人の心は、きれいに一色にはなりません。

愛と憎しみは、ときに同じ場所に住む。

僕はその矛盾こそが、信澄という人物を単純な「裏の悪役」で終わらせなかった理由だと感じました。

史実の信澄も、信長の一族の中で一定の地位を築いていました。

天正9年の京都馬揃えでは、信長の嫡男・信忠、次男・信雄、信長の弟・信包、三男・信孝に次ぐ位置にいたとされ、明智光秀の娘を妻としていました。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

つまり、史実で「信澄が本能寺の変を計画した」と確認されているわけではありません。

「義昭名義の偽文書を作り、光秀へ信長討伐を促す信澄」は、『豊臣兄弟!』が組み立てたドラマ上の仕掛けとして見る必要があります。

そこを混同しないことが、この展開を楽しむうえでも重要です。

考察|25話の本当のテーマは「黒幕探し」より兄弟が残した二つの未来

ここからは僕の考察です。

第25話を見た直後なら、「本能寺の黒幕は足利義昭なのか?」が最大の疑問になります。

第26話まで見れば、「いや、信澄なのか?」に変わる。

第27話を見ると、さらに単純ではなくなります。

信澄は光秀を揺さぶり、自身も信長への強い思いを抱えています。

しかし最終的に光秀が本能寺へ向かうまでには、四国政策、信長との関係悪化、信澄からの働きかけ、そして光秀自身が義昭の真意を確かめようとした流れが重なります。

第27回では、光秀が斎藤利三を通じて義昭の意向を探ったところ、義昭から返ってきたのは「もう自分を巻き込むな」という趣旨の拒絶でした。これがドラマ上、光秀の決断を大きく動かす一因として描かれています。まんたんウェブ+1

だから僕は、「本当の黒幕は誰?」という問いだけで見ると、この脚本の面白さを少し取り逃がすと思っています。

25話が描いたのは、誰が光秀を操ったかではなく、光秀が揺さぶられるだけの条件がどれほど積み上がっていたかだからです。

信長は、合理的な決断を重ねています。

怪しい重臣を切る。

情勢が変われば外交方針を変える。

四国をより効率よく支配する方法を選ぶ。

天下統一というゴールだけを見れば、理解できる部分もあります。

でも政治的に正しい判断が、人の心にも正しいとは限らない。

安藤家には傷が残る。

長宗我部には不信が残る。

光秀には屈辱が残る。

信澄には父を失った過去が残る。

信長が前へ進むたび、背後に「置き去りにされた感情」が積もっていく。

僕には、それこそが25話の「変事の予兆」に見えました。

「豊臣兄弟」という題名だからこそ信澄が重要になる

さらに興味深いのが、信澄の父が信勝であることです。

このドラマの主人公は、秀吉と秀長。

支え合う兄弟です。

兄が暴走しそうになれば弟が支え、弟が迷えば兄が手を引く。

不格好でも二人で前へ進んできました。

一方の信長と信勝は、最後には殺し合う関係になりました。

そして、その結末を背負った次世代が信澄です。

ここに僕は、この作品ならではの本能寺の設計を感じます。

支え合った兄弟が天下へ向かう物語の途中で、殺し合った兄弟が残した傷が信長を追いかけてくる。

これは単なる歴史事件の再現ではありません。

タイトルに「兄弟」と掲げた大河だからこそ成立する本能寺です。

もし信長が弟・信勝との関係を別の形で終えられていたら。

もし信澄が母から復讐を託されず育っていたら。

歴史に「もし」はありません。

それでもドラマは、その「もし」を人間の感情として見せることができます。

支え合った兄弟は、未来へ何を残すのか。

憎み合った兄弟は、未来へ何を残してしまうのか。

第25話で信澄が差し出した一通の文は、紙ではありません。

僕には、二十年以上前に終わったはずの兄弟喧嘩が、時を越えて信長の前へ戻ってきた瞬間に見えました。

25話の新しい見方|「約束」が最初から最後まで一本につながっている

もう一つ、僕が25話を見直して気づいたポイントがあります。

この回は、実は「約束」で始まり、「約束」が壊れることで本能寺へ近づいています。

冒頭では、秀吉が蜂須賀正勝との約束を15年越しに果たす。

中盤では、信長と長宗我部元親が、これまで認められてきた四国切り取りを確認する。

ところが終盤では、その前提が覆される。

そして光秀が苦境へ追い込まれる。

同じ「約束」でも、守られれば人はついてくる。

覆されれば、不信が残る。

もちろん戦国政治では、情勢が変われば方針を変えることも必要です。

だから信長だけを責める話ではありません。

むしろ重要なのは、正しい政策変更にも、人間関係のコストが発生するということです。

秀吉はそのコストを、人たらしと呼ばれるほどの対話で埋めていく。

信長は結果によって従わせようとする。

25話は、そのリーダーシップの違いまで本能寺直前に浮かび上がらせています。

ステアリングを切る角度は、人生の選択に似ています。

目的地へ最短で向かうだけなら、急に曲がってもいい。

でも後ろに多くの人を乗せているなら、その一度の急旋回で振り落とされる人がいる。

信長の天下への道は速かった。

だからこそ、ついていけなくなった人々の心が、25話で一斉に見え始めたのではないでしょうか。

まとめ|豊臣兄弟25話は義昭黒幕回ではなく、本能寺への導火線を描いた回

『豊臣兄弟!』第25回「変事の予兆」は、2026年6月28日に放送されました。安土城完成の祝宴と重臣追放、安藤定治の武田方への内通、長宗我部元親をめぐる政策転換、明智光秀の苦境、そして足利義昭名義の御内書まで、本能寺の変へ向かう複数の火種が一話に集められています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア+1

そして最も重要なのは、25話ラストの御内書を「義昭本人から届いた密書」と確定情報のように受け取らないことです。

第26回のラストで、御内書を書いたのは織田信澄だったと判明しました。シネマトゥデイ

さらに第27回では、父・信勝を信長に討たれた信澄が背負ってきた感情と、信長への憎しみだけでは説明できない憧れや尊敬まで掘り下げられます。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

だから25話は、「足利義昭こそ黒幕だった」と答えを出す回ではありません。

むしろ、義昭を黒幕のように見せる偽の御内書を使いながら、本当に描こうとしていたのは信長の周囲に散らばっていた不信や傷が一本につながる瞬間だったのでしょう。

正勝との約束を果たす秀吉。

追放される古参家臣。

戦に疲れた定治。

約束を覆された元親。

その間で信用を失っていく光秀。

父の仇を胸に生きてきた信澄。

安土城は完成したのに、織田家という巨大な城の内側では、すでにいくつもの柱がきしみ始めていました。

本能寺の炎は、6月2日の朝に突然生まれたわけではない。

第25話「変事の予兆」は、その炎へ向かう導火線が静かにつながった一夜だった。

ドラマが終わったあと、僕の胸に残ったのは一通の御内書よりも、そこへたどり着くまでに積み重なった、人と人との小さな亀裂でした。

よくある質問

『豊臣兄弟!』25話「変事の予兆」はいつ放送された?

第25回「変事の予兆」は2026年6月28日に放送されました。

信長の安土城での重臣追放を軸に、長宗我部元親と明智光秀をめぐる四国問題、足利義昭名義の御内書までが描かれています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

『豊臣兄弟!』25話の足利義昭の密書は本物ですか?

本物ではありません。

25話では足利義昭から届いた御内書のように見せられていますが、第26回「信長を笑わせろ!」のラストで、織田信澄が自分で書いたものだと光秀へ告白しました。シネマトゥデイ

そのため「義昭が25話で光秀に信長討伐を命じた」と断定するのは正確ではありません。

織田信澄はなぜ義昭名義の御内書を書いたのですか?

ドラマの信澄は、父・信勝を信長に討たれ、母・ちよから父の無念を晴らすよう言い聞かされて育った人物として描かれています。

一方で信澄役の緒形敦さんは、信澄が信長を憎みながらも、憧れや尊敬も抱いていたと解釈しています。ステラnet | NHK財団が運営するネットメディア

そのため信澄の行動は単純な悪役の陰謀ではなく、信長・信勝兄弟の因縁が次の世代へ受け継がれ、本能寺へ重なっていく仕掛けとして見ると、『豊臣兄弟!』のテーマがより鮮明になります。

文・岸本 湊人

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