『VIVANT』で乃木卓と明美が結婚式を挙げたロケ地は、島根県出雲市の出雲大社・神楽殿です。大勢のエキストラを集めて早朝から準備した、本物の神前結婚式場を使った大規模撮影でした。
画面に映った時間だけを見れば、ほんのわずかな場面です。
それでも、その短い映像の奥には、朝5時から集まった約100人のエキストラ、細部まで整えられた衣装、地元・島根との深いつながり、そして福澤克雄監督が「本物の場所」で撮ることにこだわった理由が隠れていました。
僕はこの撮影秘話を知ってから、第9話の結婚式を見返したときの印象が大きく変わりました。
あの場面は「乃木憂助の両親が幸せだったころ」を説明する回想ではありません。
失われる前の家族の幸福を、現実に人々が夫婦の契りを結んできた場所で撮った。
そこに『VIVANT』らしい、途方もないほど細かな演出の意味があったように感じるのです。
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『VIVANT』出雲大社の結婚式ロケ地はどこ?神楽殿で撮影
結論から言えば、『VIVANT』の結婚式シーンが撮影された場所は出雲大社の神楽殿です。
島根県公式観光情報サイトの『VIVANT』ロケ地特設ページでも、出雲市大社町杵築東195にある出雲大社がロケ地として掲載され、乃木憂助の両親である卓と明美が親族に囲まれて結婚式を挙げる場面を、神楽殿で大勢のエキストラとともに撮影したことが明記されています。
新郎は、のちにノゴーン・ベキとなる乃木卓。
若き日の卓を演じたのは林遣都さんです。
新婦は乃木憂助の母となる明美で、高梨臨さんが演じました。
2023年9月10日放送の第9話では、ベキがなぜ現在の姿になったのか、その過去が大きく掘り下げられます。
その回想の中で映し出されたのが、まだ悲劇を知らなかった卓と明美の結婚式でした。
ここが重要です。
『VIVANT』における島根県は、単に「日本らしい風景を撮れる場所」として選ばれたわけではありません。
乃木憂助の故郷であり、父・卓の人生が始まり、乃木家の歴史につながっていく土地として位置づけられています。
島根県の公式ロケ地サイトでも、主人公・乃木憂助の出身地であり物語の舞台になった地域として島根が紹介されています。2026年の続編放送に合わせて特設サイトもリニューアルされています。
だからこそ、両親の結婚式を東京のスタジオセットで済ませるのではなく、出雲大社で撮る。
この選択だけで、乃木という男の背後に何代も続いてきた家族の時間が感じられます。

出雲大社神楽殿そのものにも、画面を支える圧倒的な存在感があります。
出雲大社公式によると、現在の神楽殿の大広間は270畳。正面には長さ約13メートル、重さ5.2トンにもなる大注連縄があり、御祈祷や結婚式をはじめ、さまざまな祭事が行われています。
つまり、あの場面を包んでいた空気は、美術スタッフだけが一から作った「それらしい神社」ではありません。
長い時間、人々の祈りや人生の節目を受け止めてきた本物の空間だったのです。
『VIVANT』結婚式シーンの撮影秘話|朝5時にエキストラ100人
そして驚かされるのが撮影規模です。
『VIVANT』公式Instagramが明かした舞台裏として報じられた内容によると、この結婚式シーンでは朝5時から約100人のエキストラが集合し、支度や練習を行ったとされています。
100人です。
しかも、完成したドラマで結婚式が映る時間は約20秒程度でした。
この数字を並べただけでも、『VIVANT』という作品の異様なほどの作り込みが伝わってきます。
たとえば、画面の後方に座る参列者。
一瞬しか映らない人。
顔がはっきり確認できない位置にいる人。
通常なら「雰囲気が出れば十分」と考えても不思議ではありません。
しかし実際には、多数の参加者が早朝から集まり、和装を整え、動きや段取りを確認して撮影に臨んでいました。視聴者からも、短い場面にこれほど多くの人と準備が投入されていたことへの驚きが寄せられたと報じられています。

僕が特に面白いと思うのは、「100人」という人数そのものではありません。
20秒の説得力を作るために、100人分の現実を用意したことです。
ドラマは不思議なもので、画面の端まで本気で作られていると、視聴者は細部を意識して見ていなくても「本物らしさ」を感じます。
逆に、一人でも場違いな動きをしていれば、理由は説明できなくても映像全体がどこか軽く見えてしまう。
『VIVANT』は、視聴者が言葉にできない違和感まで先回りして消しているように感じます。
わずか数秒の画面を成立させるために、映らない部分まで整える。
僕にはそれが、この作品のスケール感を作った最大の秘密の一つに思えます。
なぜ出雲大社だった?本物の結婚式場だから生まれた説得力
『VIVANT』のロケ地を調べていて、もう一つ重要な事実に気づきます。
出雲大社神楽殿は、ドラマ撮影用に結婚式場らしく見せた場所ではなく、現在も実際に神前結婚式が執り行われる場所です。
出雲大社公式では、神前結婚式は神楽殿、または「おくにがえり会館」2階の結婚式専用神殿で行われると案内されています。
さらに、出雲大社の神前結婚式では、夫婦の契りを示す神話にちなみ、神殿に設けられた「天之御柱」を夫婦で巡り、御神前で誓詞を述べる形が紹介されています。
ここまで知ると、ロケ地としての意味がぐっと深くなります。
卓と明美は、『VIVANT』の物語の中で確かに結ばれました。
その後、二人には憂助が生まれます。
しかし家族はバルカで過酷な運命に飲み込まれ、幼い憂助は両親と引き離され、卓の人生も大きく変わっていく。
そんな未来を知っている視聴者にとって、出雲大社の結婚式はあまりにもまぶしい場面です。

僕は、ここに出雲大社を選んだ理由の核心があるのではないかと考えています。
出雲大社では、大国主大神と須勢理比売命の夫婦の御神徳を仰ぎ、新たな人生へ踏み出す人々の神前結婚式が行われています。
つまり「縁」や「夫婦の契り」と強く結びつく空間です。
その場所で、のちに引き裂かれてしまう夫婦の最も幸せな瞬間を撮る。
幸福を象徴する場所だからこそ、その後に待つ喪失がより痛く見える。
これは脚本上の説明ではなく、ロケ地そのものを物語の一部にする演出だったのではないでしょうか。
ステアリングを切る角度一つで、その後の景色が変わることがあります。
ドラマのロケ地も同じです。
どこで撮るかという選択一つが、登場人物の人生をどこまで深く感じられるかを変えてしまう。
『VIVANT』の出雲大社は、その好例だと僕は感じました。
乃木の祖父役は山陰合同銀行の頭取だった
結婚式シーンには、もう一つ驚きの撮影秘話があります。
卓の父親、つまり乃木憂助にとって祖父にあたる人物を演じていたのは、当時の山陰合同銀行頭取・山崎徹さんでした。
TBS NEWS DIGの記事では、山崎さんが出雲大社での結婚式だけでなく、卓と明美が結婚のあいさつに訪れる乃木家の場面にも出演したことが紹介されています。セリフはないものの、「卓の父」という重要な立ち位置でした。
なぜ銀行の頭取がドラマに出演したのでしょうか。
山崎さんは以前、福澤克雄監督と共通の知人を通じて対談や食事をする機会があり、その際に島根を舞台にドラマを撮ってほしいこと、自分もエキストラとして出たいことを冗談交じりに伝えていたそうです。
その縁が実際の出演につながったと説明されています。
まさに「ご縁の国」で生まれた、ご縁のキャスティングです。
しかも興味深いのは、出演したことだけではありません。
山崎さんは撮影を振り返り、新郎の父として温かなまなざしを向ける役割だったと説明するとともに、羽織袴の家紋から、画面ではほぼ分からないような足元の装いまで細かく準備されていたことに触れています。

僕は、この「見えないところまで作る」という証言がとても好きです。
視聴者が家紋を一時停止して確認するとは限りません。
草履まで意識して見る人は、さらに少ないでしょう。
それでも準備する。
この積み重ねが、『VIVANT』の映像に漂う妙な重量感につながっているのだと思います。
そして福澤監督自身も、世界へ届けられるドラマを作るうえで島根の映像が必要だったという趣旨を語っています。島根県公式のロケ地サイトでも、監督は以前から島根の景観に魅力を感じており、この作品のために島根で撮影したという思いを明かしています。
海外を舞台にした巨大な陰謀。
国家を背負う別班。
国際組織テント。
そんな大きな物語の中心に、出雲や奥出雲の風景が置かれているのは偶然ではありません。
世界へ向かう物語だからこそ、その主人公が帰るべき「日本の原点」を本物の土地で撮る。
その発想が、『VIVANT』を単なるスパイドラマではない作品にしていたのではないでしょうか。
出雲大社の結婚式は『VIVANT』で何を意味していたのか
ここからは僕自身の考察です。
『VIVANT』の出雲大社での結婚式は、乃木卓と明美の過去を説明するだけの場面ではなく、乃木憂助という人物が失った「原風景」を映したシーンだったと僕は考えています。
第1シーズンの物語では、乃木は長い時間をかけて自分の父を追い続けます。
その父がノゴーン・ベキであると知ったとき、乃木が向き合うことになるのはテロ組織のリーダーだけではありません。
「父は、なぜ父でいられなくなったのか」という問題です。
その答えを理解するためには、ベキになる前の卓を見なければならない。
だから第9話では、若き日の卓が描かれます。
勉学に励んでいた青年。
明美と出会った一人の男性。
そして出雲大社で、多くの人々から祝福されながら新しい家庭を築こうとしていた新郎。
この順序があるからこそ、その後の悲劇がただの設定ではなく「一人の人間が壊れていく物語」として胸に届きます。

しかも結婚式の場所は、実際に夫婦が誓いを立てる出雲大社神楽殿です。
僕には、この「現実」と「物語」の重なりが非常に重要に思えます。
スタジオに巨大なセットを作れば、映像としては同じような場面を撮れたかもしれません。
CGで背景を足す方法もあったでしょう。
それでも本物の出雲大社で、本当に多数の人を集め、本物の神前結婚式が行われている空間に役者を立たせた。
その結果、卓と明美の幸福が「ドラマの説明」ではなく、一度本当に存在した人生のように見えるのです。
そして、ここに『VIVANT』のタイトルにも通じるものを僕は感じます。
乃木憂助の人生は、別班員としての顔だけで作られているわけではありません。
商社マンであり、孤児として育った少年であり、卓と明美の息子であり、乃木家の歴史を背負う存在でもある。
出雲大社の結婚式は、そのすべてが始まる前の場所です。
戦いが始まる前。
裏切りが始まる前。
父がベキになる前。
乃木が別班になる前。
ただ一組の男女が、家族になろうとしていた瞬間。
だからこそ約20秒でも忘れにくい。
僕はそう感じています。
2026年には『VIVANT』の続編が放送され、TBS公式でも前作ラストから直結する乃木憂助の新たな物語が展開されています。島根県公式のロケ地サイトも続編放送に合わせて更新され、出雲大社は現在も前作を象徴するロケ地の一つとして紹介されています。
物語がどれほど世界へ広がっても、乃木という人物を理解しようとすると、最後には島根へ戻ってくる。
その意味で出雲大社は、「有名観光地を使った豪華ロケ地」以上の存在だと僕は考えています。
乃木家の物語の出発点であり、失われた家族の幸福を記憶している場所。
それが『VIVANT』における出雲大社なのではないでしょうか。
まとめ
『VIVANT』で乃木卓と明美の結婚式が撮影されたロケ地は、島根県出雲市の出雲大社・神楽殿です。島根県公式のロケ地情報でも、神楽殿で大勢のエキストラとともに撮影されたことが確認できます。
さらに撮影の舞台裏では、約100人のエキストラが朝5時から集まり、支度や練習を行っていたことが明らかになっています。完成映像では約20秒の場面だったことを考えると、その準備量には驚かされます。
そして乃木の祖父役として、当時の山陰合同銀行頭取・山崎徹さんも参加していました。衣装は家紋や足元まで細かく整えられ、本編では目立たない部分にも制作陣のこだわりが注がれていました。
何より印象的なのは、出雲大社神楽殿が今も実際に神前結婚式の舞台であることです。
本当に人が永遠の契りを結ぶ場所で、のちに過酷な運命に引き裂かれる卓と明美の幸福を撮った。
そこまで知ると、あの短い回想が少し違って見えてきます。
ドラマの中では数十秒でも、登場人物にとっては人生そのもの。
そして、その数十秒を本物に見せるために、画面の外では100人を超える人々と制作スタッフが早朝から動いていた。
僕の胸に残ったのは、そんな「見えない部分にまで物語を宿らせる」『VIVANT』の執念でした。
世界を駆ける壮大な物語の始まりにあったのは、銃声でも陰謀でもありません。
出雲の静かな神殿で、二人の男女が家族になろうとした、一つの幸せな朝だったのです。
よくある質問
『VIVANT』の結婚式シーンのロケ地はどこですか?
島根県出雲市大社町杵築東195にある出雲大社の神楽殿です。島根県公式の『VIVANT』ロケ地特設サイトでも、卓と明美の結婚式シーンが神楽殿で撮影されたことが紹介されています。
『VIVANT』の出雲大社ロケには何人のエキストラが参加した?
公式Instagramで明かされた舞台裏として報じられた情報では、約100人のエキストラが参加し、朝5時から支度と練習を行ったとされています。完成した結婚式シーンは約20秒程度でした。
出雲大社神楽殿では実際に結婚式を挙げられる?
はい。出雲大社公式では、神前結婚式を神楽殿または「おくにがえり会館」2階の専用神殿で執り行うと案内しています。神楽殿はドラマ用のセットではなく、実際に結婚式や御祈祷などが行われている場所です。
――岸本 湊人
観たいものが見つからない…
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