『VIVANT』のバルカ共和国は架空国家です。公式なモデル国の明言はありませんが、撮影地・言語・景観からモンゴルが最有力の土台と考えられます。
ただし、バルカの内戦や警察、テントをめぐる歴史まで、現実のモンゴルを再現した設定ではありません。この記事では、公式発表で確認できる事実と、そこから導ける考察を明確に分けて解説します。
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VIVANTバルカ共和国のモデルはモンゴルなのか?
結論から言えば、バルカ共和国の公式なモデル国は発表されていませんが、複数の根拠からモンゴルが最有力の土台と考えられます。
重要なのは、「モンゴルで撮影された」という確認済みの事実と、「モンゴルがモデルだ」という解釈を混同しないことです。
TBSが2023年12月20日に公開した福澤克雄監督へのインタビューでは、バルカ共和国を「架空の国」と明記したうえで、バルカの場面をモンゴルで撮影したと説明しています。
一方、そのインタビュー内でも「バルカ共和国の正式なモデルはモンゴル」とは述べられていません。したがって、公式情報に忠実な答えは、架空国家だが、映像や言語を作る現実の基盤としてモンゴルが使われたとなります。
観点 確認できる事実 本稿での判断
国の実在性 バルカ共和国は架空国家 現実のモンゴルとは別の国
撮影地 バルカの場面をモンゴルで撮影 景観面ではモンゴルが最大の土台
劇中言語 日本人キャストもモンゴル語の台詞を使用 言語面でもモンゴルの影響が強い
建築・生活文化 草原、砂漠、ゲル、都市部などが登場 モンゴルの自然と文化を活用
政治・歴史 内戦、警察組織、テントなどは劇中設定 現実のモンゴルと同一視できない
『VIVANT』第1シーズンは、2023年7月16日から9月17日までTBS系「日曜劇場」で放送された全10話の作品です。
物語は、丸菱商事に勤務する乃木憂助が、誤送金された130億円を取り戻すためにバルカ共和国へ向かうところから始まりました。
乃木を演じたのは堺雅人さんです。阿部寛さん演じる公安刑事・野崎守、二階堂ふみさん演じる医師・柚木薫らと出会い、バルカ警察に追われながら日本への脱出を目指します。
やがて物語は、一企業の誤送金事件から、自衛隊の秘密組織「別班」、謎の組織「テント」、そして乃木と父・乃木卓の過去へと広がっていきました。
国名も歴史も架空でありながら、画面に映る大地、建物、空港、ホテル、そこで交わされる言葉には現実の重さがあります。
僕は、この「虚構の物語を現実の土地に立たせる」という設計こそ、バルカ共和国が本当に存在するように感じられた最大の理由だと考えています。
バルカ共和国のロケ地はどこ?劇中の使用場面も整理
バルカ共和国のモデルを考えるうえで、最も大きな根拠になるのがモンゴルでの長期ロケです。
福澤克雄監督はTBSのインタビューで、モンゴルに約2か月滞在したと振り返っています。一方、放送開始前に公表された制作情報では、撮影期間は約2か月半と紹介されました。
数字に幅があるのは、監督本人の滞在期間と、作品全体のロケ実施期間が同じとは限らないためでしょう。
そのため、本稿では「監督は約2か月滞在し、作品としては約2か月半規模のモンゴルロケが行われた」と整理します。
撮影は首都ウランバートルだけではありません。
北部のダルハンから南部のゴビ砂漠まで、約1000キロを縦断して行われました。砂漠では一日の気温差が30度近くに達し、電気、ガス、水が限られたゲルに宿泊しながら撮影したことも報じられています。
さらに、現地スタッフへの取材記事では、撮影隊の総移動距離が1万キロを超え、ゴビ砂漠周辺で約3週間の撮影を続けたと伝えられました。
ここで注意したいのは、「約1000キロ」と「1万キロ超」は矛盾する数字ではないという点です。
約1000キロはモンゴル国内を南北に移動した撮影範囲を示し、1万キロ超はロケ期間中に車両などが往復や移動を重ねた総距離を示すと考えられます。
2024年3月27日、日本旅行はTBSテレビの協力を受けた『VIVANT』モンゴル・オフィシャルツアーの内容を発表しました。
その資料では、実際のロケ地と劇中での使用場面が次のように整理されています。
- スフバートル広場:バルカ共和国の首都クーダンの広場
- 国立ドラマ劇場:バルカ国際銀行
- ナライハ地区の建物:第7話で別班の精鋭部隊6人とノコルが対峙した場所
- ブーダイホテル:バルカ国内にある日本大使館
- ケンピンスキーホテル:乃木が宿泊したクーダンイーストホテル
この対応関係を見ると、モンゴルの風景を無作為に切り取ったのではなく、建物や街区の性格を見ながら、バルカ国内の施設へ置き換えていたことが分かります。

スフバートル広場は首都クーダンの中心部
ウランバートル中心部にあるスフバートル広場は、バルカ共和国の首都クーダンを象徴する場所として使用されました。
乃木たちが活動する都市には、ホテル、銀行、企業、警察、行政機関が存在します。広場を中心に現代的な建物が並ぶ景観は、バルカを単なる「砂漠の国」に見せない役割を果たしました。
クーダンには金融機関や企業があり、国際空港も整備されている。
その一方、都市を離れると道路や建物の少ない荒野が広がる。この景観の落差が、一つの国家としての奥行きを生み出しています。
国立ドラマ劇場はバルカ国際銀行
国立ドラマ劇場は、劇中ではバルカ国際銀行として登場しました。
銀行は、乃木が追う130億円の誤送金事件と深く関わる施設です。
外観に重厚さのある実在の建物を使用することで、架空の銀行にも「この国で長く営業してきた組織」のような歴史が感じられました。
セットは物語に必要な形へ自由に作れますが、実在する建築には、周辺道路や街の空気まで含めた時間の蓄積があります。
その蓄積が、説明されていないバルカの過去まで想像させたのだと思います。
ナライハ地区は別班とテントの対峙に使われた
ナライハ地区の建物は、第7話のクライマックスで、別班の精鋭部隊6人と二宮和也さん演じるノコルが対峙した場所です。
ここでは、首都の整然とした空間とは異なり、荒涼とした建物と広い土地が緊張感を生みました。
人物同士の距離を大きく取れる場所では、誰がどこから狙っているのか、どちらが主導権を握っているのかが一目では分かりません。
僕の胸に残ったのは、広い場所なのに逃げ場がないという矛盾です。
地平線まで視界が開けた空間は自由の象徴にも見えますが、銃口を向けられた人間にとっては、身を隠す場所のない舞台になります。
ブーダイホテルは日本大使館として登場
ダルハンにあるブーダイホテルは、乃木、野崎、薫が逃げ込んだ日本大使館の撮影に使われました。
日本旅行のオフィシャルツアー資料でも、「在モンゴル日本大使館として撮影に使われたブーダイホテル」と明記されています。
もちろん、劇中の設定は「在バルカ日本大使館」です。
オフィシャルツアー資料の「在モンゴル日本大使館」という表現は、モンゴルの撮影地として説明するための表記とみられますが、ドラマの物語上はバルカ国内にある日本大使館として理解する必要があります。
大使館前で繰り広げられた逃亡と突破の場面では、建物だけでなく、周囲の道路や街全体が使われました。
扉の向こう側へ入れるかどうかが、生き延びられるかどうかを分ける。
国境線は地図の上に引かれますが、あの場面では大使館の門が、乃木たちにとって小さな国境になっていました。
バルカ共和国の言語は何語?モンゴル語との関係
劇中でバルカの人々が使用している言語には、実在するモンゴル語が使われています。
作品内ではバルカ共和国の言語として成立していますが、制作現場では日本人キャストもモンゴル語の台詞に挑戦しました。
TBSが公開した二階堂ふみさんへのインタビューでも、柚木薫が話す言葉を「モンゴル語」として質問しています。これは、完全な架空言語を一から作ったのではなく、実在するモンゴル語を使用したことを示す公式側の説明です。

モンゴル語を使用した意味は、海外らしい雰囲気を加えることだけではありません。
序盤の乃木は、バルカの警察官や住民が話している内容を常に正確に理解できるわけではありません。
視聴者も字幕や通訳がなければ、声の強さ、表情、視線、周囲の反応から相手の意図を推測することになります。
つまり、言葉の壁によって、視聴者は乃木と近い不安を体験するのです。
知らない言語が周囲を飛び交うと、目の前の人物が味方なのか、追跡者なのか、単なる通行人なのかさえ判断しにくくなります。
映像は見えているのに、状況の全体像が見えない。
この情報の不足が、『VIVANT』序盤の緊張感を支えていました。
また、日本語とモンゴル語には、文の中で動詞が後ろに置かれることが多いなど、語順上の似た部分があります。
しかし、発音や母音、声の出し方、会話のリズムまで同じではありません。
俳優は意味を覚えるだけでなく、感情を込めながら、相手を見て動き、決められたタイミングで台詞を成立させなければなりません。
母語ではない言葉を慎重に発する俳優の緊張は、異国で追われる乃木たちの緊張とも重なりました。
滑らかさだけを競うのではなく、登場人物が置かれた状況を含めて言語演出を見ると、モンゴル語を使った狙いがより深く伝わってきます。
バルカ共和国とモンゴルの違いは何?
バルカ共和国とモンゴルは、撮影地や言語では強く結びついていますが、政治、歴史、治安、国家組織まで同じではありません。
ここを混同すると、作品のフィクションを現実のモンゴル社会への評価として受け取ることになります。
バルカ共和国で描かれた主な架空設定は次のとおりです。
- 乃木卓と家族が巻き込まれた過去の内戦
- バルカ警察による乃木たちへの追跡
- 謎の組織テントが誕生した経緯
- 丸菱商事の誤送金事件に関わる企業や人物
- 日本の別班や公安が介入する国際事件
- バルカ国内の地名、国家制度、組織の名称
これらは『VIVANT』の物語を成立させるために作られた設定です。
現実のモンゴルの政治や警察、民族関係、治安状況をそのまま描いたものではありません。

一方で、映像の基盤にはモンゴルの現実があります。
草原、砂漠、ゲル、都市部の建築、道路、ホテル、現地俳優、モンゴル語などは、画面の中で確かな質感を持っています。
この関係を短く表すなら、バルカ共和国はモンゴルそのものではなく、モンゴルの土地と言語を借りて作られた架空国家です。
制作側が実在するモンゴルをそのまま舞台にしなかった理由は、物語上の自由度にもあると考えられます。
仮に「モンゴル共和国」を舞台にして、警察の追跡、内戦、武装組織、企業犯罪を描けば、それらが現実の国家に対する描写だと受け止められる可能性があります。
国名、歴史、制度を架空にすれば、現地の雄大な風景や文化を映像に生かしながら、政治や治安に関する物語はフィクションとして構築できます。
僕は、この距離の取り方が誠実だったと感じます。
モンゴルの景色を借りながらも、バルカで起きる犯罪や対立までモンゴルの現実として押しつけない。
実在する土地への敬意と、エンターテインメントとしての自由を両立させるために、架空国家という設定が必要だったのでしょう。
なぜバルカ共和国は実在する国のように見えた?
ここからは、確認できる制作情報と劇中の演出を踏まえた僕の考察です。
バルカ共和国が本当に存在するように見えた理由は、ロケ地、言語、現地俳優、移動の描写が、ばらばらではなく一つの国を形作っていたからだと考えます。
特に効果的だった演出は、次の3点です。
都市部から荒野への移動で国の広さを見せた
乃木たちは、銀行やホテルが並ぶ首都クーダンから、道路も建物も少ない砂漠や草原へ移動します。
場所が変わるたび、物語の危険も変わりました。
都市部では警察組織、監視、人の目が脅威になります。
荒野では、水、車、方角、燃料、国境までの距離が生死を左右します。
モンゴル国内を大きく移動して撮影したからこそ、バルカは一つの街ではなく、「都市と地方を持つ国家」に見えました。
撮影時には約250人のキャストとスタッフが参加し、馬、ラクダ、山羊、羊など総数3000頭以上の動物も撮影に関わったと報じられています。
画面の隅に映る人や動物まで含めて世界を作ったことが、バルカの生活感につながっています。
警察との会話で視聴者にも言葉の壁を体験させた
バルカ警察がモンゴル語で会話する場面では、視聴者がすぐに意味を理解できない時間があります。
その間、僕たちは乃木たちと同じように、相手の表情や行動から状況を読み取らなければなりません。
説明を受けてから物語を見るのではなく、状況の中へ放り込まれてから考える。
その順番が、バルカを観光地ではなく、独自のルールが動いている外国として感じさせました。
砂漠を美しい背景だけで終わらせなかった
砂漠は雄大で美しい場所です。
しかし、『VIVANT』では、その広さが乃木たちを助けるとは限りません。
遮るものがなければ、遠くからでも発見されます。
道を間違えても目印がなく、車が故障すれば移動手段を失います。
広いことと自由であることは、同じではありません。
ステアリングを切る角度が人生の選択に似ているように、砂漠で選ぶ一本の道は、生存と追跡の境目になりました。

僕が『VIVANT』のロケ設計で最も優れていると感じるのは、海外の絶景を見せること自体を目的にしなかった点です。
モンゴルの広さは乃木の孤立を強調し、モンゴル語は情報不足を生み、実在する建物は架空の国家に歴史を与えました。
この3つが同じ方向を向いていたから、バルカ共和国は地図に存在しなくても、物語の中では揺るぎない重さを持てたのでしょう。
まとめ
『VIVANT』のバルカ共和国は、現実には存在しない架空国家です。
TBSは、バルカ共和国を「架空の国」と説明し、その場面をモンゴルで撮影したと公表しています。一方で、「正式なモデル国はモンゴル」と断定した公式発表は確認できません。
そのため、最も正確な結論は次のとおりです。
バルカ共和国はモンゴルそのものではないものの、撮影地、劇中言語、自然、建築、現地俳優などから、モンゴルが最有力の土台と考えられます。
スフバートル広場は首都クーダンの広場、国立ドラマ劇場はバルカ国際銀行、ブーダイホテルは日本大使館、ナライハ地区の建物は別班とノコルの対峙場所として使われました。
一方、内戦、バルカ警察、テント、企業犯罪、国家制度は作品独自のフィクションです。
モンゴルを舞台にした物語ではなく、モンゴルの大地と言葉から、新しい架空国家を作り上げた物語。
夜更けに画面が暗転しても、砂漠を走る車と、聞き慣れない言葉の響きが胸に残る。バルカは架空でも、そこで感じた距離と緊張は、確かに本物だったのです。
よくある質問
バルカ共和国は実在する国ですか?
実在しません。バルカ共和国は、TBS系日曜劇場『VIVANT』のために作られた架空国家です。
バルカ共和国のモデルはモンゴルですか?
公式なモデル国としてモンゴルが発表された事実は確認できません。ただし、撮影地、劇中言語、景観、建築など複数の根拠から、モンゴルが最有力の土台と考えられます。
バルカ共和国では何語を話していますか?
劇中では、バルカの言語として主にモンゴル語が使われています。日本人キャストもモンゴル語の台詞に挑戦しました。
岸本 湊人
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